私はインドや、インドネシアに、多くの親しい友人を持っている。先の大戦を体験した世代は、日本が立ち上がったことによって、西洋による植民地支配から解き放たれたことを知っていて、日本に感謝しているが、若い世代となると、村山談話や、河野官房長官談話をはじめとして、日本が侵略戦争を戦ったとか、非道な行為を働いたとして自国を辱めてきたために、日本に対して暗いイメージをいだくようになっている。

 戦勝国のせいにしてはなるまい。独立を回復した後に日本人自身がつくりだした自虐史観が、日本観を歪めてしまった。

 先人を敬うことなく、歴史を忘れた民は軽んじられる。

60代以上がアメリカ製の国へ“移民”

 先月、雑誌に頼まれて、俳優の津川雅彦氏と対談した。津川氏は歴史と文化への洞察力に富む優れた論客だ。そのなかで私はこう述べた。

<08米大統領選挙>「黒人大統領」は誕生するか?賭けに出た民主党

「移民の国」アメリカ〔AFPBB News

 「アメリカは移民の国ですよね。ヨーロッパから新天地にわたってきて、アメリカという国をつくったわけだから、その歴史はまだ浅いものでしょう。一方、日本はこれだけ長い歴史を持ちながら、昭和20年8月の敗戦によって、国民が国を捨てたり移民したりすることはなかった。でも、精神的にはアメリカ製の新しい国へ “移民” してしまった。」

 「その結果、それ以前の歴史にはまったく関心を持たなくなった。だからアメリカと同じようにまったく歴史の浅い国になってしまいましたね。日本でいちばん具合の悪い世代というのは、たしかに団塊の世代、60から上じゃないですかね。その点、いまの20代、30代というのはかなり健全ですよ。昭和20年8月前の歴史を知ろうとしていますからね。」

 どうして、日本はこのような腑抜けの国家になってしまったのだろうか。

新宿の茶髪=失われた青春を取り戻す「散華の若者」

キャバクラ嬢が労組結成へ

若者の街、東京・新宿〔AFPBB News

 ある夜、私は新宿にいた。若い茶髪をした男女たちが遊び呆けていた。私は唖然とした。だが、その時に、「きっと先の大戦で散華した若者たちが凱旋して、失われた青春を取り戻そうとして、この若者たちのなかに宿って、そうしているのだ」と思って、祖国危急の時には、若者たちがきっと立ち上がってくれると信じた。