天皇陛下と中国副主席との会見15日に、慣行破りに反発も

羽田空港に到着した中国の習近平国家副主席〔AFPBB News〕

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 結論としては、中南海の役人ならともかく、在京中国大使館関係者がこのルールを知らなかった可能性は限りなくゼロに近いと考える。この種の情報は必ず口上書の形で在京の全大使館・代表部に伝達されているはずだからだ。

 また、筆者の北京での経験から申し上げれば、中国政府関係者は「プロトコール(典礼)の達人」である。上は中南海の政治局常務委員クラスとの会見から、下は各省庁副部長(副大臣)への表敬にいたるまで、ほとんど例外はなかった。

 日時、場所はもちろんのこと、出迎え、会談の席次から記念写真の立ち位置まですべてが事前に入念に決められる。中国政府関係者のこだわりが尋常でない場合も少なくなく、会談の具体的内容よりも、誰に会わせるかを重視しているとすら感じたものだ。

 ちなみに、12月14日付の環球時報は「会見の時間調整という簡単な問題を・・・皇室の政治利用の問題に引き上げた」などと論評したようだが、これこそ笑止千万である。中国で「会見の時間調整」は常に政治判断を伴う機微な問題だからだ。

合成の誤謬

北京市内の航空写真、五輪会場や市内一の高層ビル

日中の官僚間で合成の誤謬が生じたのか?(写真は北京の紫禁城と天安門広場)〔AFPBB News

 それでは、「1カ月前」の期限に間に合わなかった理由は何か、というのが次の疑問だろう。ここら辺から事実関係の確認は怪しくなるのだが、常識的に考えて、その時点で習近平副主席訪日日程が確定していなかった可能性が最も高いと思われる。

 当然日中双方は「1カ月前」ルールを十分意識していただろう。ならば、日本側は中国側に対し「期限まであと○日しかない」などと再三にわたり日程を確定するよう求めたに違いない。普通日本の役人なら必ずそうするだろうし、また、そうすべきなのだ。

 ここからは筆者個人の推測になるが、日中官僚組織で一種の「合成の誤謬(ミクロの視点で合理的判断をしても、マクロでは意図しない結果が生ずること)」が生じた可能性があるのではなかろうか。