12月4日に発表された米11月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の悪化幅が▲1万1000人にとどまった上に、9・10月分に計+15万9000人の上方修正がかけられるなど、予想外に強い結果となった。
非農業部門雇用者数の、主なカテゴリー別に見た11月の増減は、以下の通りである。特に、人材派遣(temporary help services)は4カ月連続の増加で、プラス幅は前月を上回る大きなものになった。
また、今回の雇用統計では、週平均労働時間が33.2時間(前月比+0.2時間)となり、過去最低水準近辺での底ばい状態を脱して、今年2月(33.3時間)以来の水準になった。前回10月分で10.2%に急上昇していた失業率は、今回は0.2%ポイント低下して、10.0%になった(下3ケタまで取ると9.992%)。ガイトナー米財務長官はブルームバーグテレビのインタビューで、1年以内に失業率が10%を下回る確率は極めて高い、と述べた。こうした強い数字を受けて、非農業部門雇用者数がこのまま前月比プラスに早い段階で転じるのではないかという見方が市場で再燃しつつあり、金利先物が織り込む来年半ばの利上げ確率が上昇している。
しかし、今回の結果をそのまま延長して米雇用の先行きを予想すべきではない。筆者としては、ここで以下5つの点を指摘しておきたい。
(1)まず指摘すべきは、雇用者数の内訳が意味していることである。人材派遣が4カ月連続で増加したことは、政策効果もあって足元の米国経済が持ち直しているにもかかわらず、米企業トップが景気回復の持続性や力強さに自信を抱くことができず、正社員の採用増加にまで踏み込まずに、人材派遣の活用で対応しながら様子を見ようとしていることを示唆している。週平均労働時間の増加も、同じ文脈でとらえることができる。労働時間の絶対水準がかなり低くなっているだけに、需要のさらなる増加に際して、企業が既存の雇用者の稼働率上昇(=残業時間の増加)で対応できる余地は大きい。