財務省は11月19日、2010年度の診療報酬改定で、総額3%の引き下げを要求することを明らかにしました。

 診療報酬とは、医療機関が保険で患者を診療した時に、対価として受け取る報酬のことです。診療内容によって点数が定められており、「1点=10円」で計算されています。

 財務省の方針に対して、個人的には「裏切られた」と嘆くよりも、諦めの境地に近いものがあります。

 総選挙時の民主党のマニフェストには、「累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけました。総医療費対GDP(国内総生産)比を経済協力開発機構(OECD)加盟国平均まで今後引き上げていきます」と記載されていました。

 つまり、米国のGDP比16%はさすがに極端だとしても、高い高齢化率を加味して、日本の医療費を、現在のGDP比8.0%から11~12%程度まで(40~50%増)今後アップしていくことを打ち出していたのです。

 ですから、厳しい財政を考えても、とりあえず1~2割は増額するものだと考えていました。そこへ来て、プラスはおろか「マイナス改定」という方針が表明されたのです。

官僚の出してくるデータからは見えないもの

 社会保障費の削減に関する財務省の常套句はこうです。

 「公共事業予算は激減している、その一方、社会保険予算は増加の一途をたどっている。だから社会保障費は減らさざるを得ない」

 国民の多くは、「官僚がはじき出した、きちんとしたデータに基づいた発言なのだから、そういうものなのだろう」と考えているようです。もちろん、日本の官僚は優秀ですので、言われたことの大部分はそのまま信じて大丈夫です。