オバマ大統領の初めての訪中が終わった。
11月17日の胡錦濤主席との共同記者会見で、オバマ大統領は米中両国の「戦略的信頼」関係の構築と深化を宣言する一方、台湾への武器供与を約束した「台湾関係法」にも言及した。台湾の馬英九政権がこれに強い安堵感を覚えたのは、言うまでもない。
台湾関係法が公布されてから、今年でちょうど30年。この年月は、米中・国交樹立と米台断交の30年でもある。1979年末、米華相互防衛条約(米国と台湾国民政府が結んだ軍事条約)が破棄された。だが、それによって台湾の安全保障への米国の関与がなくなったわけではない。破棄された条約の代わりに、台湾の防衛に必要な武器の供与を定めたのが、米国内法である台湾関係法なのだ。
台湾を「不可分の領土」と位置づける中国にとっては、もちろんこの「台湾関係法」の存在は「内政干渉」そのものであり、一貫して反対してきた経緯がある。とりわけ同法に基づく米国の台湾への武器供与には神経をとがらせてきた。
台湾の軍事力は米国の手のひらの上
米中・国交樹立後の米国の歴代政権は、中国を正統政府と認める「1つの中国」政策を採りつつも、中台関係を律するものとして「台湾関係法」の存在に言及してきた。台湾の安全保障への米国の関与が、これによって担保されてきたと言ってよい。
ただし、米国の大統領が米中首脳会談に関連して「台湾関係法」に言及したのは、ブッシュ前大統領の2003年が最後であり、それ以降は言及がなかった。
2008年5月まで台湾では、中国との「統一」を拒否する独立色の強い陳水扁政権の時代だった。中国に挑発的な陳政権に米国は苛立ち、米台関係が冷え込んでいたことがその背景にある。
この米台関係の冷え込みは、米国による武器供与にも影を落とし、米国は台湾への供与を凍結させてきた。というのも、台湾に供与する武器の選定は、米国政府が決定する。いくら台湾が欲しいと言っても、あくまでも中台の軍事バランスを基礎に、その時の米国政府が判断して決めるのである。
武器供与に際しては、「台湾が大陸を直接攻撃できるような兵器の供与はしない」というのが米国の基本政策である。いわば「専守防衛」を台湾に課していることになる。その台湾が安心できるだけの武器装備を提供し続けられるかが、米国には問われることになる。
制空権の確保が台湾には死活問題
台湾にとって、特に戦闘機の増強は、中国との軍事バランスを保つ上で極めて大きな意味を持つ。
台湾は大陸から200キロほどの距離にある、九州を一回り小さくした島だ。中国が台湾を軍事的に占領するためには、大規模な揚陸作戦を展開する必要がある。台湾がその揚陸作戦を阻止するためには、制空権を確保することが絶対の条件となる。