やはり、メドベージェフはプーチンと違う。

 二頭政権は頭が2つあるが、実は脳は1つしかなく、プーチンがすべてを牛耳っている。私もそう思っていた。だが、最近のメドベージェフの一連の発言を聞いて、必ずしもそうではないと感じるようになってきた。

 まず、メドベージェフが連邦議会で発表した年次教書である。具体性は乏しい内容だったが、思想的にはプーチン主義と異なっている。

 また、ベルリンの壁崩壊20周年祝祭での発言、さらにその前には、クレムリンのサイトのブログ内で「(スターリン時代の)政治粛清による犠牲者をしのぶ日」を巡る発言があった。これらの内容は明らかにプーチン主義とは合わない。

プーチンが掲げてきた愛国主義

 まず歴史認識の問題である。プーチンもスターリン主義を弁護していないが、その時代の業績(大国の構築とドイツとの戦争の勝利)は評価すべきであるという雰囲気をつくり出していた。

 それに対してメドベージェフはブログの中で、「国民が大きな悲劇に見舞われた記憶は、国民が大きな勝利を手に入れた記憶と同じように重要である」と主張し、次のように論じている。

 「世論調査によれば、18歳から24歳までのロシアの若者の90%は、スターリンによる粛清の犠牲になった政治家や活動家の名前を知らないという。これは憂慮すべき数字である。

 ソ連の全国民が犠牲になったあの『テロ』は、想像もできないほどの規模だった。戦前の10年間にわたって、国民の一定の階層が迫害され、滅ぼされようとしていた・・・。

 『国家の最高の目標を達成するための、やむを得ない犠牲だった』と正当化する声がたびたび聞こえてくる。しかし、国の発展や成功への野心がいかなるものであっても、人間に悲しみと損失をもたらすには価しない。人間の命より重い価値は存在しないのである」