2008年に中国の1人当たりGDPは3000ドルの大台に乗った。
一般家庭の消費を見ると、モータリゼーションが始まり、テレビも液晶やプラズマの薄型テレビへの買い替えが増えている。同時にブームとなっているのが、マイホームの購入。北京や上海などの主要都市では、床面積120平方メートルのマンションが1500万~2000万円の高値で売られている。
ちなみに、人民元の価値を購買力平価(PPP)で再評価すると、現在の為替レートの10倍になる計算である。したがって、主要都市で売られている不動産のほとんどは「億ション」ということになる。
一方、中国人の家庭の所得を見ると、夫婦共稼ぎが一般的だが、毎月の収入は平均して1万元(14万円)以下が多い。年収の10倍以上ものマンションを購入するのは、一体どんな人たちなのか。中国人の消費行動は謎だらけである。
所得を押し上げる謎の「陰性収入」
謎に包まれる都市の家庭の消費行動を明らかにするには、その収入の実態を解明する必要がある。
まず、中国社会は戸籍管理制度により都市と農村に大きく2分割され、いわゆる二元化の社会になっている。そして、都市の住民は職業別に公務員、企業経営者、中小企業オーナー、知識人、労働者など10種類に分類される。
この中で、特に公務員と企業経営者、知識人は、給与所得以外に多額の「陰性収入」を得ているのだが、その実態が明らかになっていない。
例えば公務員の給与所得は突出して高いわけではないが、給与以外に高額の「職務消費」(交際費)が付与され、管轄する企業や団体からプレゼントをもらうことも多い。そして、国際会議やセミナーなどに出席する場合、講演しなくても「出場料」が支給される。
現行の税制では給与所得について源泉徴収(累進課税)されるが、これらの臨時収入は源泉徴収の対象になっていない。したがって、交際費の私的な使用やプレゼントの受け取り、およびその他の臨時収入を合計すれば、給与所得の数倍になるだろうと推察される。
そして、学校の教師も「陰性収入」をたくさん得ているという報告がある。例えば教師の中には、正規授業の時間外サービスとして有償で補習を実施する人がいる。その授業料のほとんどは教師個人のポケットに入り、実態が明らかになっていない。
こうした補習に対する謝礼には、明確な相場がない。そのため、富裕層の家庭は担当教師に破格な謝礼を払って、特別な世話をしてもらうという。
以上のような「陰性収入」は、もちろん正規のGDP統計に集計されていない。したがって、全国平均の1人当たりGDPは3000ドルを超えたが、都市部の本当の1人当たりGDPはその3倍以上に達していると見られる。
最近行ったサーベイでは、年収300万円以上の都市部の富裕層は6000万人以上に達すると推計されている。
車やマンションはステータスシンボル
昔からよく言われていることだが、中国人の消費行動は一点豪華主義である。限られた予算にもかかわらず年収の10倍以上に相当するマンションを購入し、なお、年収の2~3倍に相当する高級セダンやSUVも積極的に購入する。その他に、薄型テレビなどのデジタル家電も購入する。