次に、日銀による俗称「モンスターオペ」がある。銀行が中小企業から受け取る手形をほぼ自動的に日銀からバックファイナンスしてもらい、「銀行間資金取引の市場レート並み」というケタ外れの好条件で3カ月の貸し出しに応じ、その規模は巨額に達している。
2008年末、そして2009年3月末に資金繰り破綻を最小限に抑えられたのは、こうした施策の効果であることは関係者であれば皆知っている事実だ。
金融機関に対する自己資本規制の強化に向け、国際社会は走り出した。自己資本不足を恐れて貸し出し資産を抑制しようという心理が銀行に働き、万が一貸し渋り的な現象が起こる可能性があるならば、こうした施策を続けていくことが常道であろう。
日銀や市場関係者には「市場機能が回復するにつれ、モンスターオペは市場金利の形成を歪める」という不満もあろうが、ここは忍従してもらうしかない。政府も保証協会の保証枠をさらに確保するか、場合によっては利子補給を行うという財政出動の覚悟が必要だ。そして、公的資本注入を積極的に行うため、銀行側にその受け入れを促すことになろう。
こうした支援策が講じられていても苦しい中小企業というのは、資金繰りというより、構造上の問題を抱えている可能性が高い。企業の構造改革という市場原理への政府介入に是非の議論はあろうが、断行するならばそれは産業政策であり、金融の仕事ではない。補助金を税金から出すべき筋合いのものだ。
亀井大臣の「熱い思い」、財投拡大で解決へ
そのための財政資金がない。国会でそうした補助金が認められない。だとしたら、以前も当コラム(「貸し渋り」その本質とは?)で指摘した通り、日本にはこういう場合に都合よくカネが出てくる仕組みがある。
それが財政投融資である。資金の出し手は高齢者を中心とした無垢な預金者だが、この運用を政府が保証することであたかも財政資金のような使い方が可能になる。金融業としては大変効率が悪いから、泣かされているのは預金者なのだが、政府にとっては大変便利な「打出の小槌」である。
平成の「水野忠邦」か・・・
中小企業の資金繰りに対する亀井金融相の熱い思いは、郵政民営化反対論と合わせて「財投拡大」が果たしてくれよう。
しかし筆者は、こうした時代の逆行は大変辛いことだと思う。かつて財投の創生期に携っていた元大蔵官僚が、郵政民営化論が強烈に吹き荒れた時に聞かせてくれた次の言葉を思い出す。
「財投は財政の補助的な役割として大変使い勝手の良いシステムである。しかし肥大化させてはいけなかった」
