米連邦公開市場委員会(FOMC)は12日発表の声明文で、市場が最も注目していた長期国債購入3,000億ドル拡大の有無について、次のように記した。決定は全員一致である。
「さらに、FRBは3,000億ドルの国債を購入する過程にある。これらの国債購入が完了する際の、市場における円滑な移行を促すため、これらの取引のペースを緩やかに落とすことをFOMCは決定した。10月末までに全額が購入されるだろうとみている(In addition, the Federal Reserve is in the process of buying $300 billion of Treasury securities. To promote a smooth transition in markets as these purchases of Treasury securities are completed, the Committee has decided to gradually slow the pace of these transactions and anticipates that the full amount will be purchased by the end of October.)」
現行の上限枠を維持しながら買入れペースは落とすことで、3月導入時に「向こう6か月間(over the next six months)」、すなわち9月までとしていた買入れの期間を10月末まで延長することが明らかになったわけである。FRBの長期国債購入停止によって市場で「断層」が生じる(ショックが加わり長期金利が上昇する)ことの回避を狙った一種のソフトランディング措置だというのが、今回の決定の表面的な姿である。
だが同時に注目すべきは、なぜ期限を10月末までに設定したかという点である。FOMCの次回開催予定日は9月22~23日。その次は11月3~4日である。10月末に買入れ終了期限を設定することで、FOMCは事実上、会合2回分の「時間稼ぎ」を行ったことになる。
しかも、今回の声明文は、4月と6月の声明文にあった次のようなくだりを、そのまま残した。これは、経済・金融情勢の展開次第、すなわち生産関連指標が息切れすることによる景気「二番底」懸念の強まりといった事態に陥る場合には、長期国債を含む証券購入の全体枠を上積み方向で見直す可能性が排除されていないことを示している。
「FOMCは経済見通しの展開と金融市場の状況に照らして、証券購入のタイミングと全体額を評価し続けるつもりである(The Committee will continue to evaluate the timing and overall amounts of its purchases of securities in light of the evolving economic outlook and conditions in financial markets.)」
この間、年0~0.25%の超低金利政策については、「より長い期間(for an extended period)」という表現の時間軸を付加した状態が維持された。仮に、長期国債購入がこのまま10月末で停止されるとしても、スラックの大きさゆえに物価上昇圧力が非常に弱い中で、超低金利が長期化するだろうという見通しは変わらない。ウォールストリートジャーナル紙が掲載したエコノミスト調査では、利上げ開始時期について、10年7月以降とする回答が多数を占めた。
このほか、今回のFOMC声明文は、景気と金融情勢の認識を上方修正する一方、物価認識については前回6月声明文の記述を踏襲した。
ただし、景気認識のうち家計支出(個人消費)については「安定化の兆候を示し続けている」という判断を維持しつつも、その抑制要因として、「雇用喪失の継続、収入の伸び停滞、家計資産の減少、信用逼迫」の4つを列挙。前回はなかった「収入の伸び停滞(sluggish income growth)」が付け加えられた。米雇用統計における時間当たり賃金の伸び鈍化と整合する表現追加である(「米7月雇用統計の実力」ご参照)。