福島第一原子力発電所の事故で、日本は今後、長期にわたって食品の放射能汚染問題と向き合わざるを得なくなった。「風評に惑わされないようにしなければ・・・」と思う一方で、周辺地域の農作物は安全なのか、本当に市場に汚染食品が出回っていないのか――と不安がよぎるのも事実。生産者、消費者、流通業界、外食産業、それぞれが「安全・安心」を模索していくことになるだろう。
そんな中、いち早く、独自の放射線量検査をスタートさせた企業が取り組む「食の安全」の現場を訪ねた。
驚くほど手間のかかる放射線量検査
川崎市にあるゼンショーの食品安全追求本部・中央分析センターでは、毎日、全国4000店舗以上の同社グループのレストランで使用する野菜や卵の放射線量検査を実施している。
テレビのニュースなどで野菜に測定器を近づけ「ほとんど針は振れません。安心です!」と安全性をアピールしている場面を目にしたことがある人は多いのではないだろうか。頭の中で、そんな検査風景をイメージしていたのだが、実際には驚くほどの手順を踏んで検査していた。
最初に、バックグラウンドデータとして室内の放射線量を測定。次に、放射性物質が付着しやすい野菜の表面を測定する。この時、測定器は野菜にピッタリと密着させるのがポイント。10センチメートル離せば、データは全く違ってしまうという。野菜表面と室内環境の放射線量が同じレベルならば、作業をする人が野菜に触れても危険がないことを確認でき、実際に食べる部分の放射線量測定に進むことができる。
食べられる部分全体の放射線量を測定するため、野菜を細かく切り刻み均一にする。測定用の容器が放射性物質で汚染されていないことを確認するため、カラの状態で容器の放射線量を測定。バックグラウンドデータとして容器に超純水(=不純物を含まない水)を入れて測定。最後に、切り刻んだ野菜を容器に入れて測定し、超純水のデータと同じレベルであれば「安全」が確認できた――と言えるそうだ。
信頼度を高めるため、それぞれの段階で3回データを取るので、実際には1つの野菜の安全を確認するために、計15回もの計測を行うことになる。