住んでいる地名が、その人そのものをイメージづけることがあります。
住んでいる場所で抱く優越感
「どこにお住まいですか」と聞かれた時、「○○に住んでいます」とある優越感を持って答えられる場所に住みたいというのは、誰もが思うことかもしれません。
住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、藤和不動産、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所の不動産大手8社が共同で運営するマンションサイト「MAJOR7」が発表した「住んでみたい街アンケート」を見ると、この5年間、「自由が丘」「吉祥寺」「横浜」「二子玉川」がトップグループを占め、「恵比寿」「広尾」「鎌倉」などが続きます。
なるほど、それぞれの地名を聞くと、それぞれの立地イメージが何となく思い浮かびます。それこそ “ブランド立地” と言われるための必須条件です。
面白いのは、再開発や大型商業施設の建設などにより、それまで “ブランド立地” ではなかった場所が “ブランド立地” に格上げされることがあることです。
海辺の街「マリネーゼ」がリッチ(立地)ブランドに
例えば、「新浦安」は、整然と立ち並ぶ大規模マンション群、駅前の商業施設、複数のシティホテル、お膝元にある東京ディズニーランドや東京湾の海、そして何より100平方メートルを超えるマンションが都心の60平方メートルのマンションの価格で購入できるという割安感で、ここ10年間で一気に “ブランド立地” に駆け上がった代表例です。
「浦安」ではなく、首都高湾岸線より海側の「新浦安」というこだわりもまた、たとえ駅から徒歩20分以上であっても「新浦安」に住まうマリネーゼ(新浦安に住まう主婦たちの愛称)のプライドの1つでしょう。
そして、ここ1~2年で新たな “ブランド立地” として躍り出たのが「豊洲」です。
隣合った「お台場」が港区なら、「豊洲」は江東区。豊洲駅から銀座1丁目駅まで有楽町線でわずか5分という至近距離にもかかわらず、ダンプカーが走り回る殺伐とした埋立地として、不動産デベロッパーはむしろ「豊洲」という地名を隠すように販売していました。
ところが、今や「豊洲」という地名をキャッチフレーズに使うほどの人気。その理由の1つに、三井不動産が開発した大型ショッピングセンター、「ららぽーと豊洲」の存在は欠かせません。
また、再開発の街には、それまでの土地を縛る人間関係等のしがらみもなく、その街に引っ越してきた人たちの新しいコミュニティーが生まれ、経済的にも文化的にもいわば同質な “人種” が集まるため、いったんあるイメージが生まれると、そのイメージがどんどん増殖し、育ち始めるという現象も見られます。
豊洲は「キャナリーゼ」「キャナリーマン」で新ブランドに
コミュニティーの同質化ということで分かりやすいのが、上にも書いた「マリナーゼ」という呼称です。リゾート感あふれる新興の「ミドルアッパーの賢い人が選ぶ街」という「新浦安」のイメージは、そこに住む奥様たちの容貌やライフスタイルを表現する「マリナーゼ」という呼び名によって定着し、次にその言葉自体が、「マリナーゼ」になりたい、という新しい住民を呼び込むという現象を引き起こしました。