前回コラムでは、以下の3点を中心に中朝関係と脱北者問題というコンテクストの中で取り上げた。
(1)近年緊張化する外交関係のなかで、脱北する人間、中国で暮らす脱北者が激減してきていること
(2)北朝鮮側の脱北行為への取り締まりがより一層厳しくなってきていること
(3)国際社会で責任あるステークホールダーとしての役割を果たすことが求められる中国政府にとって、脱北してきた北朝鮮人を如何に「処理」するかというプロセスが、以前にも増して複雑化していること
50メートル先には無邪気に遊ぶ北朝鮮の子供たちが
2年前の8月、開山屯という国境地帯を独り歩いていた。太陽が視界を遮る。2~3歩前に進むだけで、汗が流れ出てくるような、暑い日だった。
筆者の中朝国境の旅も終盤に差しかかっていた。何百キロ歩いたか分からない。体力も限界に近づいてきた。
しかし、疲労の背後には、いつも快楽があった。国境を歩く、すなわち、国際関係に迫る。最後まで歩こう。前だけを見て。
北朝鮮が近い。50メートル先には、10歳に満たないと思われる子供たちが「国境河川」の中で追いかけっこをしたり、お母さんの洗濯を手伝ったりしている姿を目にすることができる。
彼女たちは50メートルこちら側に来れば、そこが「憧れの中国」だという真実を認識しているのだろうか。ちゃんと食べているのだろうか。お国のことをどう思っているのだろうか。
いや、本当はそんなことどうだっていいはずだ。少女たちにとっては、「いま」がすべてなんだから。お友達と思いっきりはしゃぐ。へとへとになって帰宅する。いっぱい寝る。
そんな当たり前の生活を、彼女らが享受できていたらいいな、なんて考えながら、向こう岸を眺めていた。