VW会長「非正規を全員解雇」、週刊誌インタビュー
独ダイムラー、12月から自動車生産を1か月休止へ

エコカー減税、乗り遅れた輸入車勢(参考写真)〔AFPBB News〕

残り0文字

 減税導入に際しては、トヨタを筆頭に国内自動車業界が経済産業省や与党の「自動車族」に対して強力に働き掛けていた。業界団体のある幹部は「減税対象を決めるには、合理的な物差しが必要。広く普及している指標は4つ星しかない」と基準の妥当性を強調している。

 輸入車が事実上対象に含まれないことが分かっていながら、特例も経過措置もなく減税は実施された。2009年4月から3年間、エコカー減税が続けられる。

 抗議を続けても得策ではないと悟り、VWは5月に「数カ月以内に4つ星を取得する」と宣言した。低排出ガスの認定を取得すれば、VW車の8割が減税対象になる見込みだ。メルセデス・ベンツやアウディなどドイツ勢の日本法人も認定取得を目指す方針だが、輸入車の出遅れ感は否めない。

日本メーカー、米政府のGM支援を警戒

 もちろん、地元優遇政策を打ち出しているのは日本だけではない。ロシアは2009年1月、乗用車やトラックの輸入関税引き上げに踏み切った。フランスは雇用や生産拠点の維持を条件に、国内自動車大手のルノーとプジョー・シトロエン・グループへの低利融資を決めた。

 日本メーカー各社が特に神経をとがらせているのは、米国の動向だ。オバマ政権が巨額の公的融資を続けた甲斐もなく、クライスラーとゼネラル・モーターズ(GM)は相次いで経営破綻に追い込まれた。クライスラーは伊フィアットとの提携に救いを求め、GMは国有化されることが決まった。米政府は自動車産業の救済に既に4兆円超を投じ、しかも更に膨らむ公算が大きい。

ビッグスリー支援めぐり民主・共和対立、17日から米議会審議

米政府支援が日本車の脅威に〔AFPBB News

 戦略の失敗で破綻したとはいえ、100年を超える歴史の中でGMが蓄積してきた技術力は侮れない。これが、日本勢の一致した見方だ。「これまでの融資を無駄にしないため、米政府は本気でGMを支えるはず。政府支援を受けながら開発投資を続ければ、環境技術で日本に追いつくのも時間の問題だ」(自動車大手首脳)と警戒する声さえ出始めている。

 また、米議会では新車購入の補助金導入に向け、関連法案が既に上下両院を通過した。燃費がガソリン1リットル当たり約7.6キロ以下の車を約11.9キロ以上の車に買い替えれば、4500ドルの補助を支給するという内容だ。

 しかし、燃費が7.6キロ以下の日本車の数は極めて少ない。例えば、現行車種で最も燃費が悪い部類のトヨタの高級大型車「センチュリー」でさえ、日本の燃費基準でガソリン1リットル当たり7.8キロも走るのだ。

 一方、米国社会で環境や燃費を重視する層は、既に日本車や欧州車に乗り換えているケースが圧倒的に多い。つまり、この補助制度のターゲットは、米国製の大型車を根強く支持しているユーザーになる。

 別の自動車大手首脳は「米国車から他の米国車へ乗り換える人が最も多いだろう。補助制度で一番恩恵が大きいのは、破綻を回避したフォード・モーターではないか」と予想する。

 日本の自動車市場は成熟しきっており、メーカーは北米はじめ海外市場に活路を見い出すほかない。保護主義の胎動が世界的なうねりになれば、日本の基幹産業の前途に大きなリスク要因が横たわることになる。