前回に引き続き、「がん予防10か条」を紹介しよう。今回は第6条からだ。
第6条は「アルコール」。男性は1日2合程度までとする。ビールならば350ミリリットルを1本か2本。女性は男性の半分の1合程度。理由は、アルコールががんのプロモーターだから。従って、依存症の人はがん発症のリスクが非常に高くなる。また、二日酔いをするような過度の飲酒は、免疫力を下げ、風邪も引きやすくなる。
酒は百薬の長
ただ、1合程度の飲酒は、逆に免疫力を高めることが知られている。健康増進クリニック院長の水上治院長も次のように指摘する。
「飲酒量がゼロ、1合、3合を比較したデータを見てみると、がん発症のリスクはU字カーブを描いています。つまり、3合はもちろんリスクが一番高いけれども、ゼロ、つまり全く飲まないケースよりも1合程度を飲む人の方がリスクが低いのです。ほろ酔い加減になるくらいの飲酒は、血流をよくし、リラックス効果があるからだと考えられます」
「酒は百薬の長」と言うが、これも理に適ったことなのだ。ただし、適量という条件がついてのことだが。
第7条は「保存・調理」について。ここでは、1日の食塩摂取量を6グラムまでとし、できれば5グラムを目標数値として挙げている。さらにカビの生えた穀物や豆類を避けるよう促している。日本人はおおよそ11グラム摂取しているので、この数値はかなり厳しいものだ。しかし、水上医師はこう言う。
「私はこの提言にはあまり納得していません。なぜなら、これでは味噌汁が飲めないからです。毎日味噌汁を1日に2~3杯飲んでいる人は、胃がんと乳がんの発症が半分になったというデータもあります。大豆に含まれているイソフラボンががん予防作用を持つうえに、発酵した味噌を摂取することでさらに予防効果が期待できるからです」
「がん予防10か条」を謳っている本『食べもの、栄養、運動とがん予防』は、欧米人を主な対象としているので、食生活がかなり違う日本人には異なる部分もあると考えた方がよいだろう。
がんの再発予防のためには生活改善が重要
第8条は「サプリメント」。ここではサプリメントに頼った食生活を戒めている。日本でもサプリメントが生活の中に広く入り込んできたが、あくまでも通常の食事があって、その不足分を補うものとしてのサプリメントであることを認識しなければならない。食事をおろそかにして大量のサプリメントで健康を得ようというのは完全な間違いだ。
「野菜をたくさん食べてがん発症リスクを低くしたというデータはたくさんありますが、サプリで抑制できたというデータは極めて少ないのです」(水上院長)
第9条は「母乳哺育」について。6カ月、母乳哺育をすることを勧めている。これは母親を主に乳がんから、子供を肥満や病気から守るために有効だからだ。これは女性ホルモンの影響だろうと考えられている。
第10条は「がん治療後」について。ここでは、がんを治療した後、食事や栄養、体重、運動について専門家の指導を受けることを勧めている。つまり、がんの再発を防ぐために、食事療法をはじめとして、9条までに提唱されてきたような生活習慣の改善が再発予防に有効だというのだ。