4月以降、定期的に週2回本社に出勤し始めたサムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長(69)から、ついに爆弾が落ちた。グループ企業であるサムスンテクウィンに対する経営監査の結果、さまざまな不正行為が発覚したことで激怒、社長を即時更迭した。自ら記者団の前にやって来て「サムスングループ全体に不正腐敗が蔓延しているようだ」とまで厳しい口調で語った。
何が、サムスン会長をここまで激怒させたのか。
グループ企業の社長たちを凍りつかせた「会長のお言葉」
2011年6月8日。ソウルの江南にあるサムスン電子本社39階の役員会議室で恒例の「水曜社長団会議」が開かれていた。
サムスングループの社長団会議は、会長も出席して重要意思決定をしたこともあるが、今はグループ企業の社長が集まった勉強会と連絡事項の伝達が目的で、会長も出席しない。
この日も、大学教授を招いて「(李氏)朝鮮時代のリーダーシップ」という講演を聞き、和やかな雰囲気で会議が終わろうとしていた。
その時、グループの代表格で李健熙会長の「秘書室長」業務を手がけ、頻繁にグループの経営について説明し、指示を仰いでいる金淳沢(キム・スンテク)副会長(61=未来戦略室長)が突然、「会長のお言葉を伝える」と、話し始めた。
「会長に(グループ企業である)サムスンテクウィンに対して実施していた経営監査の結果について報告すると、『サムスンの誇りであったきれいで清潔な組織文化が壊れてしまった。海外で、優良企業が、内部の不正腐敗で崩れてしまった例は少なくない』と大変なお怒りだった」
10分余りだったが、金副会長の予想もしなかった発言に、40人ほどいた社長たちは凍りついてしまった。
サムスングループで全権を握る李健熙会長の「怒り」が、言葉だけで終わるはずがない。
玄関横の記者たちに自ら近づき説明
この日、サムスンテクウィンの社長が、「監督責任」を取って退任したことが明らかになった。サムスングループの社長が年末年始の定例人事以外の時期に辞任することは極めて異例だ。もちろん、会長の意向を受けての更迭人事だったはずだ。
李健熙会長の怒りは、これだけでは収まらなかった。翌日の6月9日。午前8時に本社に出勤した李健熙会長は玄関横に記者たちがいることを見つけると、わざわざ自分から近づいて「質問があればどうぞ」と話しかけたのだ。