これまでの20年間で、日中の外交力は完全に逆転したように思われる。国際競争の中で互いに切磋琢磨していれば、力関係が変化するのは当然のことだろう。重要なのは、その外交力がどのように変化し、経済力とは別になぜ逆転したのかを解明することである。
前回の寄稿では、中国経済の原動力はヒトとモノのアロケーションの合理化にあると指摘した。
それに対して、日本はヒトのアロケーションが合理化していない。要するに、国の「頭脳」に問題が起きている。端的に言えば、中国に比べて日本の外交力が弱体化した背景には、日本のシンクタンク力の弱さがある。
シンクタンクの役割とは
そもそも、「シンクタンク(think-tank)」とは、その名の通り知恵袋でなければならない。しかし、日本のシンクタンクの多くは知恵袋とはいえず、「刺身のつま」程度の存在になっている。国や企業にとってシンクタンクが羅針盤の役割を果たしていくべきであるが、現状ではなくても困らない存在でしかない。
例えば、企業は経営がうまくいっている時には刺身のつまを買う余力があり、シンクタンクを維持するコストが払える。しかし、経営環境が難しくなると、真っ先に削られるのはコストセンターのシンクタンクである。
日本では、シンクタンクの帰属先によって、政府系、金融系(銀行・証券・保険)、商社系とメーカー系に大別される。政府系のシンクタンクは政策の研究・提言をしなければならない。その他のシンクタンクは本体の経営に貢献することが求められる。
しかし、実際の活動を見てみると、政府系シンクタンクはほとんど研究らしい研究を行っておらず、調査を外注するコーディネーターになっている。そして、金融系のシンクタンクは融資先や投資家の問い合わせへの対応というサービスを提供する営業の一環になっている。
それに対して、商社やメーカー系のシンクタンクは、コンサル部門は別として直接の「お客さん」が不在なため、より長期的な構造問題の研究に取り組むことが求められる。だが、その成果物を見ると、政策が提言されているわけでもなければ、構造解明にもなっていない。
おそらくこのままいくと、日本のシンクタンクの多くは形こそ残るかもしれないが、実質的には全滅してしまうのではないか。