バンクーバー冬季五輪で、圧倒的な存在感を示したのは韓国選手団だった。金メダル6個、銀メダル6個、銅メダル2個。合わせて14個ものメダルを獲得し、金メダル数では地元カナダや米国に伍して5位に入り、スポーツ強国ぶりを世界に見せつけた。
韓国に金メダルラッシュを呼び込んだサムスングループのオーナー家
韓国中がキム・ヨナフィーバー一色だが、今回の大躍進の最大の受益者はサムスングループとそのオーナー家かもしれない。
韓国選手団の大活躍を現地バンクーバーで満面の笑みで見守ったのは、サムスングループのオーナーで前会長である李健熙(イ・ゴンヒ)氏だ。
2月14日(韓国時間)、冬季五輪男子ショートトラック1500メートル決勝で韓国の李政洙(イ・ジョンス)選手が優勝した。今大会での韓国選手金メダル第1号で、これを機に韓国選手の快進撃が始まった。
歓喜の韓国人応援団の中に、李健熙氏夫妻や長男で昨年末にサムスン電子副社長兼COO(最高業務責任者)に就任した李在鎔(イ・ジェヨン)氏の姿があった。さらに表彰式で李政洙選手に金メダルを授与したのはIOC(国際オリンピック委員会)委員でもある李健熙氏だった。
李健熙氏にとっても、サムスングループにとってもバンクーバー冬季五輪は特別な意味を持つ大会だった。李健熙氏は、2007年秋に発覚したサムスングループとオーナー家による不正な機密資金事件で翌年会長職から辞任に追い込まれた。
失意の李親子を救ったオリンピック
昨年8月には背任と脱税で有罪が確定してしまった。サムスングループの後継会長と言われた李在鎔氏もサムスン電子専務のまま長期海外視察に出て経営の一線から離れることになった。
失意の李親子を窮地から救ったのが「オリンピック」だった。韓国は、2018年の冬季五輪を韓国東部の平昌に誘致することを決めている。既に過去2度、平昌誘致に失敗しており、2018年大会の誘致は3回目で最後のチャンスと言われている。
悲願実現のためには李健熙氏とサムスングループの力が是が非でも必要だとの声が、有罪判決後の昨年秋から急速に高まっていたのだ。というのも李健熙氏は長年、IOC委員を務め、海外に豊富な人脈を持つ。
韓国人でこれほどIOCに強い影響力を持つ人物がいないことは確かだ。また、サムスン電子は1998年の長野冬季五輪以来、無線通信分野での五輪公式スポンサーで、これまでにも五輪がらみで巨額の広告宣伝費を使っており、五輪誘致に欠かせない企業なのだ。