「プラットホーム」の呪縛を抜け出せない日本メーカー

日本の自動車作りの今(前篇)
2013.5.2(木) 両角 岳彦 follow フォロー help フォロー中
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トヨタとしてはヨーロッパの最激戦区、かつ乗用車としてのコアゾーンに送り込むオーリス。元をたどるとカローラ・シリーズのハッチバックモデルであり、先代から車種としては独立した。2012年投入の現行モデルはエンジニアリングとしては先代からのキャリーオーバー。エンジンは日本では1.5Lと1.8L(吸気バルブ開閉時期連続可変で吸気量すなわち出力を調節する機構を採用しているが、先鞭をつけたBMWなどに比べると人間の操作に対する応答の作り込みが浅い)のガソリン2種だが、さすがに欧州では1.4Lと2Lのディーゼル、ハイブリッドを揃え、ガソリンも1.3Lと1.6Lと排気量を控えめにしている。(写真:トヨタ自動車)
今回のオーリスの商品企画は「スポーティハッチバック」ということで、前型に対してドライバーの着座位置をかなり下げ、全高も低く、フロントウィンドウ下端も前に出して、クーペ的なスタイリングを志向した。ゴルフも第7世代では「低く、長く」という方向で商品性を高めることを狙った。しかし「4人にとって十分な移動空間」であるこのカテゴリーでは、まず車室の空間設計がクルマとしての資質を決める。スタイリング・デザインはその健康な空間をどう表現するか、という取り組みをしないと、時代を代表するクルマにはなれない。(写真:トヨタ自動車)
オーリスのリアサスペンション(1.8Lモデルの独立懸架)。車輪保持部と一体のトレーリングアーム(前方に伸びる)と上下の横方向リンクを組み合わせる、という基本配置は世界的にも1つの定型で、諸元上はゴルフも同じ。しかしそれで素性は決まらない。トレーリングアームの車体側取付位置(高さと方向)、アッパーIアームが前後方向の力が加わることを無視した薄い板材であることなど、このレイアウトが導入された時点ですでに弱点として現れていたが、いまもそのままの設計で使われている。(写真:トヨタ自動車)
かつてはトヨタの、そして日本の乗用車を代表する車名であったクラウンの最新モデル。この写真は少しスポーティな性格付けのアスリートである。もはや日本専用車種であり、中国に輸出されるのみ。それにしても商品としては自社ラインアップの中でマークXとの重複感が強く、クラウンであることの意味が伝わってこない。もう一度、「日本で乗るのに最良のフォーマルな乗用車」を目指すことで壁は破れると思うのだが。(写真:トヨタ自動車)
2003年登場の先々代クラウン。広告では原点に戻るという意味で「ゼロ・クラウン」を名乗った。レクサス系の各モデルを含めたFRレイアウトのプラットホームを大小2種類に統合しつつ、走行機能要素の配置を修正した時期であり、クラウンはその中で小さい方のプラットホームで仕立てられた。ここから骨格の基本設計、足回りのレイアウトなどを変えないままの3世代。つまり約15年にわたって、同じエンジニアリングのモデルの生産販売が続くことになる。(写真:トヨタ自動車)
新しいクラウン、ハイブリッド仕様の透視写真。これまでFR車と組み合わせていた機構はモーターによる駆動を最高速域まで使うために2段変速機を組み込んでいたが、電動駆動の効果を実用速度域に絞って変速を廃止、システムを簡略化した。エンジンも直列4気筒の2.5Lを試験モード領域での熱効率を高める方向で開発。しかし実質的には発電負荷で無段階変速するCVT、というトヨタ流ハイブリッドも登場から16年を経て、その限界が見えている。ハイブリッドだけでも次の技術進化を2010年頃には世に問うていなければいけなかったのではないか。さらにハイブリッドだけでは対応できない走行領域も市場も広いのだから、内燃機関と変速システムの革新もフルラインメーカーとしては不可欠なはずである。(写真:トヨタ自動車)
クラウンのサスペンション。3世代前から、またマークXからレクサスIS、GSまでと共用する機構であり、車体への取り付け部の位置などまで共通。それ自体は悪いことではないのだが、一番前(写真左側)に位置するステアリングギアボックスと電動アシストのメカニズムに始まり、前後ともに上下アームの幾何学配置や支持点ゴムの変形などによる車輪の位置決めの甘さと曖昧さ、路面からの入力の伝え方、走りの資質を決定づけるダンパーの、特に後輪側の取り付け位置が悪いことなど、多くの弱点を抱えたまま、お茶を濁す程度の手直しで使い続けている。(写真:トヨタ自動車)
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フォルクスワーゲンMQBの世界公開を追うように、2012年春に公表された日産の「プラットホームをモジュール化する」コンセプト、CMFの概念図。空間の大きさも高さも、重さも異なるいくつもの車種を1つの「下半身」の上で作り分けると、最適化は難しいので、基本は共通化しながらもそれぞれに適した各部位の骨格を用意して組み合わせよう、という発想。電子電気系などの装備品も共通化してモジュール構成にする、というあたりはVWと同様の方向。この構想に取り組む担当者はもっと進化したモジュール化まで踏み込もうとしているようだが、今の日産が自動車企業としてそれを理解できるかどうかが問題。(図版:日産自動車)
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