過剰技術で過剰品質を作る病気に冒されている日本半導体は、韓国や台湾の安く大量生産する「高度」な「破壊的技術」に駆逐され、凋落した。
2004年以降、講演や執筆を通じて、筆者はこの論説を主張し続けてきた。本連載においても、第1回以降、詳細に報じてきた。
この主張に対して、以下のような反論をされる方が多々おられる。
どのような反論かというと、「日本が苦心して開発したプロセス技術が、各種製造装置に一体化されて、韓国や台湾メーカーに販売された。つまり、日本の技術が装置を通じて流出した。その結果、圧倒的な資金力を持つサムスンは日本を凌駕した」というものである。
上記に対する筆者の見解は、枝野幸男官房長官流に言えば「その可能性は否定できない」となるし、班目春樹委員長風に言えば「その影響はゼロではない」となる。
遠まわしに言うのは筆者の趣味ではないので、ズバリと言わせていただければ、「そんなことは、まったく支配的な要因ではない」。
以下にその理由を説明する。
半導体集積回路の製造で最も重要な技術は何か
半導体のプロセス技術には3段階の階層がある(下の図)。
まず、最小基本単位の「要素技術」がある。具体的には、シリコンウエハ上に薄膜を形成する成膜技術、その上に回路パターンを転写するリソグラフィー技術、実際に加工するドライエッチング技術、残差や微小パーティクルを除去する洗浄技術、所望のパターンが形成できたか欠陥はないかを調べる検査技術などである。この中で、リソグラフィーとドライエッチングを合わせて微細加工技術と呼ぶ。