クライスラー、米政府から40億ドル受領 公的資金支援で

再建計画に注目〔AFPBB News〕

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 自動車産業については、オバマ大統領が3月末に強硬姿勢を示し、「延命シナリオ」は後退を余儀なくされた。クライスラーは4月末に伊フィアットとの提携を軸にした再建計画の提出期限を迎える。ジープなどごく一部のブランドを除けば、ほとんどの生産ラインが不要になるとみられるが、利害関係者がゼネラル・モーターズ(GM)ほど複雑ではないため、仮に、連邦破産法第11条の申請に追い込まれても、大きな混乱には至らないというのが大方の見方だ。

 一方、GMは旧態依然の労働協約や不要なブランドなどをそぎ落とすことができれば、まだ再生可能と見られている。もちろん連邦破産法11条回避には、債権者や全米自動車労組(UAW)から譲歩を引き出さなければならない。それでも、アメリカを象徴するブランドである「GM」名を残すために、同社の徹底的な効率化を受け入れる覚悟が米国社会で整いつつあると言えるだろう。

 「年後半にはリセッションを脱する」――。ヒアリングした大手の運用会社、金融機関、証券会社のエコノミストの意見は、ほぼ一致している。実際、足元では消費や住宅販売などでポジティブな経済指標が出始めている。生産調整により過剰在庫の整理も進むことから、年後半からは生産の回復も期待できるといったところだ。

米国が浪費止めると、世界経済は縮小

 ただ、来年にかけての回復ペースについては意見が分かれた。2010年の実質GDP伸び率の見通しは、1%未満~3%強まで幅があった。弱気派は、個人の過剰債務解消の影響が経済の下押し圧力になると見ている。

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お買いもの好きは、しばらくお預け?〔AFPBB News

 金融危機以降、米国でも「安・近・短」志向が強まっている。米国社会が低成長や低レバレッジ、低消費に自らを適合させていく構造改革は壮大な実験であり、将来にわたって安定的な成長軌道を確保するためにも必要なプロセスである。

 雇用不安と金融機能の不安定状態が続く中、かつて借金してでも浪費していた米国人が今や、借金返済を優先せざるを得ない。貯蓄率の上昇により、家計部門が従来のように経済の牽引役になることは難しいと、筆者も考えている。結果として、消費が景気回復を牽引する絵は描きづらくなるだろう。

 同時に、グローバル経済の25%のシェアを占める米国が、従来の名目6%成長から3%程度の成長へシフトダウンすることは、日本を含めた主要輸出国が、同じく低成長の痛みを分かち合うことを意味する。

 では、経済再生に向けたリスクはどこにあるのか。目先は、官民合同基金や自動車産業をめぐるいくつかのイベントが高いハードルとなる。ただ、問題の所在が明白であり、準備期間も与えられていたことから、多少の混乱はあってもソフトランディングは可能であろう。

 リスクが顕在化するとすれば、その後になる。株式市場が二番底をつけるリスクを2点指摘しておきたい。

 1つは、リセッション脱却時期の後ズレ。現在のやや楽観的な株式市場は、年後半のプラス成長復帰を暗黙の前提としている。もし、消費低迷などでそのタイミングに遅れが出れば、市場は再び苛立ちを見せ始めるだろう。実体経済の悪化が金融部門に襲いかかり、一度は処理したはずの不良資産が再び銀行のバランスシート(BS)を蝕むだろう。

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FRBの信認低下を避けられるか?〔AFPBB News

 2つ目は、長期金利の急上昇。住宅ローン担保証券や国債買い切りなど、FRBは非伝統的金融政策に乗り出したため、FRBのBSは急膨張している。公表済みの措置を全て実施すれば、GDPの約4割に相当する5.5兆ドルにまで達する。

 信用緩和と自らの信認低下を天秤にかけながら、FRBは隘路に入り込んでいる。ひとたびバランスを失えば長期金利が急上昇し、それまでの信用緩和策の効果が水泡に帰す危険性さえ否定できない。そうなれば、株式相場の急落や景気の急減速は避けられない。バーナンキ議長は自らメディアへの露出を増やすなど、市場との対話に全力投入の姿勢だ。無事にクラッシュを避けて隘路を抜けられるかどうか、FRB史上、最も難しい舵取りを求められている。