今週はピョンヤンで原稿を書くハメになった。同市を流れる大同江(テドンガン)の中洲に立つ超高層ホテル、その34階の一室が今回の仕事場だ。
もちろん、インターネットは使えない。それどころか、ここでは個人の携帯電話の持ち込みすら禁じられている。
今回は米国のあるアジア関係民間団体の訪朝団に随員として参加した。過去3年ほど同団体の国際評議員をやっていることがご縁だ。
その意味では、この遠くて近い隣国を「日朝」ではなく、「米朝」の観点から見ることができたと思っている。
わずか2泊3日だったが、久しぶりに携帯電話とネットから完全に遮断された生活を味わった。幸いホストは北朝鮮(DPRK、朝鮮民主主義人民共和国)外務省なので、比較的自由に市内を動き回ることもできた。
今回は筆者がピョンヤンで実感した中朝関係について書いてみたい。
金総書記の訪中
ピョンヤンに向かうには北京経由が一番便利だ。偶然とは恐ろしいもので、筆者が羽田から北京に飛んだ5月21日は、温家宝国務院総理と李明博大統領が訪日し、前日から始まった金正日総書記訪中の噂が飛び交い始めた時期でもある。
その日、中国と韓国の首脳は福島を訪問し、翌日には日中韓首脳会議が行われた。一方、金総書記の訪中は5月26日現在、既に1週間続いている。しかも、同総書記の訪中は過去1年間で既に3回目だ。
幸いホテルのテレビではCCTV(中国中央電視台)、BBCからNHKワールドまで、各国の国際ニュースが視聴できる。ピョンヤンから見ると、中朝経済関係がダイナミックに動く一方で、日中韓首脳会議の方はパフォーマンスばかり、どこか空虚なものを感じた。
一例を挙げよう。以下は、過去4回の3国首脳会議での北朝鮮問題に関する議論の概要だ。内容は過去4年間ほとんど変わらない。関係者の方々には申し訳ないが、この3国首脳会議の枠組みでは、真の意味での東アジア地域の戦略議論はできないだろうと思う。