若いカップルを演じた2人はともに障がい者

 主人公のモナを演じたのはロール・カラミー。ギヨーム・ブラックの『女っ気なし』(2011)で注目を集め、フランス芸能界を描いたドラマシリーズ「エージェント物語」(Netflixで配信中)のノエミ役などで知られる。

© 2024 L.F.P. - LES FILMS PELLEAS / FRANCE 3 CINEMA

 一人息子ジョエルを演じたのはシャルル・ぺッシア・ガレット。プロの俳優であり、障がいを持つ俳優として初めて、セザール賞有望若手男優賞の一次候補16人に選出された。

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 相手役のオセアンを演じたジュリー・フロジェにも障がいがあり、普段は劇中と同じようなフランスの職業作業所(ESAT)で単純作業をして働いている。彼女の豊かな感情表現に魅せられた監督が、施設での即興ワークショップを経て、ガールフレンドのオセアン役に抜擢した。

 近年、増えつつある当事者によるキャスティング。浸透すれば、職業の選択肢が増え、大きなチャンスになる。一方で、監督は「障がいのあるなしで、人を選んでいいのだろうか」「人をモノ扱いしてしまうことにならないだろうか」と最後まで自問したそうである。

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 ドキュメンタリーも手がける監督はそれでもフィクションの中にドキュメンタリー要素を入れ込むことにこだわった。ここでは登場する指導員や施設のスタッフはすべて俳優ではなく、実際の福祉関係者である。

 後半でジョエルが迷い込んでしまうお祭りはベルギーの小さな街アトで本当に行われている巨人祭り。そして何より実際に知的障がいを持つ若いカップルを演じた二人の姿に引き込まれる。

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 ジョエルとオセアン、彼らが真剣に愛し合い、家庭を築こうとする過程を観客が一緒になって見守ることで、彼らの緊張や親の不安、どちらも感じとることができる。