地域別「勢力圏の再固定」マップ
停戦後の欧州は、地域ごとに「どの大国の影響が強まるか」で分かれていく
停戦後の欧州は、もはや単一の安全保障空間ではなくなる。地域ごとに、どの大国の影響力が強まるのかが異なり、欧州は複数の安全保障ブロックへと再編されていく。
ここでは、停戦後の欧州を5つの地域に分け、それぞれがどの勢力圏に「再固定」されていくのかを描いてみたい。
これは、冷戦後30年続いた「一枚岩の欧州」という幻想が、どのように解体されていくのかを示す地図でもある。
北欧・バルト三国:米国依存が残るNATO最前線
北欧とバルト三国は、停戦後もロシアを最大の脅威とみなす地域である。フィンランドとスウェーデンはNATOに加盟し、バルト三国は米軍プレゼンスの維持を死守しようとしている。
この地域はロシアと直接対峙する「新たな鉄のカーテン」の北端となり、停戦後も米国依存が最も強いNATO前線として固定される。
ロシアの再侵攻を最も警戒する地域であり、軍事費の増額と徴兵制の強化が続くことになる。
東欧(ポーランド軸):反ロブロックの形成
東欧は停戦後、ポーランドを中心とする「反ロブロック」として再固定される。
ポーランドは欧州最大規模の陸軍を備えた軍事大国へと変貌する可能性があり、バルト・チェコ・ルーマニアを束ねる「ミニNATO」の中核として存在感を強める。
そしてドイツやフランスとは別の安全保障極として振る舞い、ロシアに対して最も強硬な立場を取り続ける地域となる。停戦後の欧州で、東欧は独仏とは異なる独自の安全保障軸を形成する勢力圏へと変わっていく。
中欧・ドイツ圏:安全保障の「空白地帯」化
ドイツを中心とする中欧は、停戦後の欧州で最も不安定な地域となる。
経済規模こそ大きいものの、軍事や戦略の方向性は定まらず、対ロ・対中・対米の間で揺れ動く「緩衝地帯」としての性格を強めている。
さらに国内政治も、対ロ強硬を掲げる緑の党と、対ロ融和的なAfDの対立によって分裂が深まっている。
ドイツは「ロシア脅威」よりも「経済安定」を優先する傾向が強く、安全保障の面では欧州の「空白地帯」となる可能性が高い。
南欧(イタリア・スペイン・ギリシャなど):財政脆弱性を突く「中国資本の静かな浸透」
南欧では、慢性的な財政不安と失業率の高さが、外部資本への依存を深める土壌となっている。その隙間に入り込むのが中国だ。
港湾・インフラ・エネルギーといった「国家の急所」に中国資本が流れ込み、南欧は安全保障よりも経済再建を優先せざるを得ない構造に置かれている。
その結果、ロシアの脅威は相対的に低く、中国の影響力が静かに積み上がっていく地域となる。
西欧・フランス:主権回帰する軍事中枢
フランスは、停戦後の欧州で独自の軍事中枢としての役割をいっそう強めていく。
核戦力と海外介入能力を備えた唯一の欧州大国であり、EUを「自国戦略の延長」として再定義し、フランス主導の欧州軍構想を志向している。
フランスにとっての主題はロシアではなく、欧州の自立と主権回帰である。ゆえに停戦後の欧州で、フランスは独自の勢力圏を形成しようとするのである。
結論:欧州は「一枚岩」ではなく、5つの勢力圏へ
停戦後の欧州は、北欧・バルト三国が米国依存の最前線となり、東欧はポーランドを軸とした反露ブロックを形成し、中欧・ドイツ圏は安全保障の空白地帯として揺れ続け、南欧は中国浸透の受け皿となり、西欧のフランスは主権回帰を掲げる軍事中枢として振る舞う――。
こうして欧州は5つの勢力圏へと再固定されていく。
もはや「共通の脅威」を共有する地域ではなく、複数の安全保障地図が併存する大陸へと静かに変貌している。