主人:今だけよければ、自分だけよければ、金だけあれば、あとはどうでもいいやという、手っ取り早いバカが多すぎるんだよ。

 もちろん、「今」も、「自分」も、「お金」も大事だ。しかしそれが、今「だけ」、自分「だけ」、金「だけ」、の「だけ」に凝り固まっているのがバカなんだよな。

 5、6人の集団で押し込み強盗をするなど、頭悪すぎるわ。どうせボスから指示されたんだろうが、人数が多けりゃあ、捕まる確率も、罪悪感も5、6分の1に減る、とでも思ってるのかね。

 おれはできるだけニュースを見ないようにしてるけど、どうしても人間のバカな所業が目に入り、耳に入ってくるから嫌になるよ。

 そんな人間の愚かな行為を見てると、人間てのはもうダメだな、と絶望したくなってしまうよな。だって、どこにも希望の芽がないもんな。

:そうだな。

 毎日毎日、殺人事件が起きてるが、みんな麻痺していて、「またか」ぐらいしか思わなくなってる。おれたちはもう自分の身の回り、半径20mくらいの範囲での安穏が保たれていればよしとするしかなさそうだ。

主人:去年の12月29日、BSフジで「なぜ生きるか。杉良太郎81歳」という番組が放送されたんだが、きみ、見なかったか。

 昨年1年間の杉良太郎のボランティア活動を追ったものだが、また改めてかれのすごさに感心してしまったよ。

:あ、しまった、見てないわ。そんな番組があったんだ。

主人:かれは相変わらず特別監査官として全国の刑務所や警察署を飛び回っている。他方で、ベトナムの孤児院や盲学校を訪れ、国内の高齢者のダンス大会に、中学校の講演にと、休む暇がない。もう81歳なのに、すごいよ。

 おれが、杉良太郎らしさを感じたのはこういうとこだったよ。

 能登の被災地を訪れては、「みなさん、がんばらないでください。がんばるのは、わたしたちボランティア」といい、網走刑務所では受刑者とこういう会話を交わしてたな。

「なにやったの?」「覚醒剤です。6回」「やめられないかな」「いえ、これを最後にします」すると、杉は「みんなそういうんだよね」といったあと、静かにこういったんだ。「負けないでよ」