「本流トヨタ方式」の土台にある哲学について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」の4項目に分けて説明しています。

 今回は「(その4)現地現物」に関して「集中か、分散か」についてお話しします。

食事の準備を外部のプロに「集中」させる中国の家庭

 以前、中国を旅した時、中国人のガイドが一般家庭の食事について次のように説明していました。食事は、熱いものを熱いうちに食べるのを良しとするが、家庭で3度の食事のたびに温かい食事をしようとすると大変なので、一般庶民は通りの屋台で食事するのが普通だとのことでした。

 食事を安く簡単に済まそうとすれば、ご飯に梅干しだけで済みます。材料はたったの2品です。反対にご馳走を食べようとすると、「馳走」という文字通り、数多くの食材を求めてあちこち走り回らなければなりません。

 火をおこすのにも多くの燃料が要ります。けれども3~4人分しか作らない場合は、野菜など材料の切れ端が大量に残ってしまいます。

 ですから、中国では、食事の準備は路上の屋台に任せ、自分は仕事に邁進するという形ができたのだと納得しました。その方が、好きな時に好きな料理を安く食べられるに違いないからです。

 これは屋台の料理人に、食事の準備の機能を「集中」させていると考えることができます。

 現代の中国では、衛生的な台所で主婦が料理を作り、家族が揃って食べるというスタイルが普及してきました。ただし、それは一部の富裕層の話であり、外の屋台で食事するスタイルは消えることはないと思われます。

自動車メーカーも部品製造を外部に「集中」させてきた

 自動車の生産は、幅広い分野の高度な技術によって成り立っています。フォード・モーターがつくり始めた頃の自動車は単純な仕様でしたが、その部品をつくる高度な技術を持った工場が巷間になかったので、自動車メーカーはどこもほとんど内製だったと言われています。