広陵高校野球部の中井哲之監督。8月21日、広陵高校は監督交代を発表した(写真:共同通信社)
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 そもそもなぜカップ麺をこっそり食べただけで先輩から暴行を受けなければならないのか――。広陵高校野球部のことである。

 この夏、甲子園球場で開催される全国高校野球選手権大会に、広島県予選を勝ち抜いて出場していた広陵高校が、初戦に勝利しておきながら、大会途中で出場を辞退した。部内の暴力を伴う不適切行為を学校が認定し、出場辞退を発表。SNSや報道で情報が広がった。

 だがその後も、同校野球部の中井哲之監督や高野連などへの批判は静まらず、広陵高校は8月21日になって中井監督と、息子で同校野球部長の中井惇一氏の交代を発表した。

寮での間食は禁止事項

 そもそも暴力事案が起こった原因は、部員の一人がカップ麺を食べたからだという。そんな“些細なこと”が甲子園出場を辞退し、指導者が交代しなければいけないほどの暴力事件に発展した理由が、筆者にはよく分からなかった。

 と思っていたら、答えらしきものが雑誌に載っていた。

 甲子園開幕前に発売された「週刊ベースボール」7月21日号では、広陵高校が特集されている。

 その中にこんな記述がある。

<2025年の男子部員153人が全寮生活を送っている。入寮は義務ではない。自宅から通える生徒もいる。しかし、毎年、全部員が清風寮での合宿生活を希望>

<朝、昼、晩。すべて清風寮内の食堂で食事をする。実家に帰省するのは年末年始のみ。1年365日、すべて3食が用意される。「皆一緒。全員一緒」が決まり事であり、カップ麺やお菓子を口にしてはいけない。

「例えば、チョコレートを隠れて食べたとしても、本当にうまいのか、と……。もし、板チョコがあれば、151人で分けて食べる。皆一緒、全員一緒です」(中井惇一野球部長)>