数々のベストセラー書籍のPRを手がける黒田剛氏の考え方とは(写真:rammy2/イメージマート)数々のベストセラー書籍のPRを手がける黒田剛氏の考え方とは(写真:rammy2/イメージマート)

 街から本屋さんがなくなり、読書離れと言われて本が売れない時代に、50万部ヒットをはじめ数々のベストセラー書籍のPRを担当する黒田剛氏。なぜ黒田氏がPRを担当する書籍はメディアに取り上げられるのだろうか。【前編】

※この記事は『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』(講談社)より一部抜粋・編集しました。

「お困りごとはありませんか?」

 僕のPRの根幹は、この一言に尽きる。

 僕が20代のはじめに書店の外商部で新規営業を始めたとき、何をしても契約が取れない暗黒時代があった。その突破口を見つけたのは、営業車の中で読みあさった中のある1冊の本だった。

 そこに書かれていたのは、IBMの営業手法だ。もともとは一中小企業にすぎなかったIBMが、アメリカ全土で急成長を遂げたのには、1つのきっかけがあった。

 それは、自社製品の魅力をアピールすることではなかった。では何をしたのか?

 ある支社が行ったのは、まず「何かお困りのことはありませんか?」と、顧客の悩みを聞くことだった。そして、その解決策として、自社製品を提案したのだ。

 この支社が売り上げを伸ばしたポイントは、まだお客さま自身も気づいていない潜在的なニーズ(=お困りごと)を見つけて解決したことだったのだ。その方法を全支社が取り入れて、誰もが知る今のIBMになったのだという。

「これだ!」と思った僕は、すぐさま無作為な飛び込み営業をやめた。その代わり、お客さんである図書館にアポイントを取って訪問することにしたのだ。その際、IBMを参考にして、こう電話した。

「契約していただかなくて大丈夫です! ただ、こちらのエリア担当になったので、現在ご契約されている書店さんのサービスで、何かお困りのことがありましたら教えてください。10分だけでかまいません」

 すると、あれほど会ってもらえなかった図書館に、不思議なほどアポイントが取れるようになった。そして図書館を訪ねると、10分どころか、気づけば2時間ぐらい夢中で話をしているのだった。

 みなさんそれぞれに、「お困りごと」を抱えていたのだ。僕が徹底的に聞き出したのは、まさに図書館が抱える潜在的ニーズ(=お困りごと)だった。その後は、この「お困りごと」を解決することで、新規取引が続々と決まっていった。

 今の書籍PRのやり方は、このときとまったく同じ方法だ。