「減税カルト」を率いる国民民主党
それを党内融和も兼ねて抑えているのが幹事長の森山裕さんとその周辺で、議論を尽くせ、可能な限りの対応で政権運営を安定化させるべき、という方針でお話をされていますが、なぜか政調会長として抜き身で対応している小野寺五典さんや、ラスボス感を醸し出している税調会長の宮沢洋一さんはしぶしぶ協議に応じている趣はあります。
それもこれも、少数与党である石破茂政権が乗り越えなければいけない壁なのですが、今回の補正予算を含め、「国民民主党としては、所得控除一本やりで支持を伸ばしてきたので、支持者を前に安易に妥協したり、うっかり引っ込めたりすることができない」というところに最大の障害があります。
言ってしまえば、国民民主党はバラマキ的なポピュリズムであり、実質的な「減税カルト」を率いて悪の財務省、悪の自由民主党を倒してくれる俺たちの玉木雄一郎という図式で伸びてきた政党です。それまでフリーランチ的にMMT理論を支持したり消費税撤廃を主張したりしてきた支持者が、インディー政党ではない、「連合」というちゃんとした支持母体のバックボーンのある国民民主党に乗りやすかったというのも事実です。
重要なのは、103万円の壁で確かに貧困層の手取りは増えるんでしょうが、実際にはある程度、所得のある人のほうがメリットが大きいってことなんですよね。減税もそうですが。
私も個人的な利得だけ考えたら、減税も所得控除178万円まで引き上げも大賛成ですよ。控除上限が上がり、その辺の貧乏な人や学生バイトが働き控えをやめてもらえる数万円よりも、高い税率で貼り付けられている75万円がまるまる控除されるので、私らは座っているだけでガッツリ30万円手取りが増えます。ありがたいことです。今夜は一家8人全員で焼き肉だ。
しかも、一般的に減税を主張する人たちは、高齢者を除きおおむね年収300万円台の未婚層が中心で、今回の国民民主党の増えた支持者も、れいわ新選組の支持層並みにおカネのない層であることは想定されます(大学生や20代が含まれるので当然そうなるのですが)。
もともとたいした税金を納めておらず、多少減税されても財布に入るカネは微々たるものであることを理解していないようなのです。
なので、政策を見ている人たちからすれば、国民民主党は1日でも長く、越年しても構わないから三党合意を引き延ばして、あまり事情を知らない減税カルト的なポピュリズムで支持を伸ばして来夏参院選への飛躍につなげたいでしょう。
一方で、いままでの税制や社会保障、地方自治のあり方を引っ張っていてもいずれ崩壊するのであれば国民民主党の言うように乱暴でもドーンと実質減税となる所得控除をやって社会保障費の削減への道筋をつけて勤労世帯・若者世代の活力を促したいということになります。