鴻海はカルロス・ゴーン級のリストラを経産省に提案か
鴻海は、かつて日産CEOだったカルロス・ゴーン氏が行ったような大リストラ案を経産省に示しているとされる。鴻海がまず日産の経営権を取得し、日産のリストラをした後に、EV分野などでホンダは日産と組む方が効果を生みやすいのではないか。
ただ、経産省内には、鴻海が中国と近い企業であることを理由に、経済安全保障の観点から日本の基幹産業である自動車メーカーを買収することに抵抗感があるようだ。
断っておくが、筆者は、ホンダと日産の協業については否定的に見ているわけではなく、肯定的にとらえている。なぜなら、このままでは日本の自動車産業は、トヨタ自動車と同グループしか生き残れない「トヨタ一強」になってしまうと考えているからだ。
「トヨタ一強」になれば健全な競争が失われ、結果としてトヨタの競争力も落ちていく可能性がある。
クルマは今後、「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV=ソフトウェアで定義される車)」の時代になる方向だ。車体構造は、これまでの内燃機関車から大きく変化し、パソコンやスマートフォンのように車載OSによって中央制御されるようになる。
この「クルマのスマホ化」により、自動車各社はハードではなく、ソフトウェアの優劣で商品の差別化を図る戦略を描いている。米アップルに次ぐ世界有数のスマホメーカーである中国の小米(シャオミ)が北京に新工場を建設し、24年から高性能なEVを自社開発・生産し始めたのは、そうした流れの象徴と言えるだろう。
そこで勝ち残るためのカギの一つが、開発のスピード力と、莫大な開発費を回収するための規模力だと業界では言われている。こうした観点から3社連合には意義がある。
3社の23年度のグローバル販売は計約837万台。子会社のダイハツ工業と日野自動車を含めて1109万台を売って世界首位の座を維持するトヨタ自動車グループの背中が見える位置取りができ、規模では独フォルクスワーゲングループに次ぐ世界3位の自動車連合となる。
「3社連合」成立は、日本の自動車産業を支える下請け部品メーカーにも利点がある。自動車ビジネスを城郭にたとえると、消費者向けの最終商品を持つ完成車メーカーは「天守閣」、部品メーカーはそれを支える「石垣」と見て取れる。両社の競争力がともに向上して初めて日本の自動車産業の力は維持できる。
ホンダ系、日産系の部品メーカーは、「3社連合」に対して共通設計した部品を納入できるようになれば、コストダウンなど規模のメリットを享受でき、競争力強化につながるはずだ。
トヨタグループもさらなる規模拡大を狙っている。