行く手に待ち受けるもの
では、この先には果たして何が待っているのだろうか。
米国は別かもしれないが、昔からの高所得国では2007年以降の低迷が今の標準状態になったのか。
幸い、成長の新しい機会はいくつかある。
まず、1950年代や1960年代に見られたように、米国に対する遅れを取り戻すことが挙げられる。
英国の場合、「取り残された」地域の所得を引き上げる機会もある。EUの関税同盟や単一市場に復帰することも考えられよう。
もっともその英国自身は、ドナルド・トランプ氏に好まれる国になろうとするかもしれない。
EUの場合は、ドラギ氏がまとめた報告書を全面的に実行に移すことが成長の機会となる。
しかし、ほとんどの高所得国(もちろん英国も含む)の行く手には、ますます増える歳出、とりわけ防衛と高齢者福祉関連の負担の制御という難問が待ち構えている。
おまけに政策立案者は競争、イノベーション、投資の促進を目指した経済改革を進める必要もある。
英国の場合は、貯蓄が大幅に増えるよう促さなければならない。スキルを持った人材が外国から移り住むのを促進する政策も必要だ。
また特に、我々が頼りにしている情報のエコシステム(生態系)を破壊することなくAIが生産性を引き上げてくれるよう願う必要がある。
経済成長はエコロジー的にも政治的にも持続可能でなければならない。
成長の減速は今の時代の大きな特徴の一つだ。政策もこの特徴に焦点を合わせなければならない。