成功した創業者に共通するIQ信奉

 ゲイツ氏は人生の早い時期にこの教訓を学んだのかもしれない。

 だが、同じように米国のテクノロジー業界で巨万の富を手に入れた経営者にはIQ重視というゲイツ氏の当初の直感を共有している人は多いが、同氏が後に至った結論を手にした人はほとんどいないようだ。

 テクノロジー業界の大物の間には、自分が驚くような大成功を収め、わけが分からないほどの大金持ちになれたのは自分特有のタイプの知的能力のおかげだと考え、ほかの人たちにも植えつけようとする傾向が見受けられる。

 そのうえ、彼らは自分の卓越した知的能力は常にどの分野にも適用できると考えているようだ。

 自分たちはテクノロジー企業を発展させる専門性を持っているのだから、米国連邦政府の財政赤字やパンデミックへの対応、ウクライナでの戦争などについても同じくらい貴重な見識を備えているというのが、成功した創業者たちの考え方の初期設定のようだ。

 彼らには、なじみのない分野から得た新鮮な情報が神の啓示のように思えることが時折ある。

 たとえそれが、彼らを包む幻想の外側にいる者なら誰でも知っているようなことでもだ。

 同じくテクノロジー業界で財をなした若い米国人の話を紹介しよう。

 大学をドロップアウトしてパリ旅行から帰ってきたばかりだった彼は、筆者を見て目を大きく見開き、フランス革命って聞いたことあるかと尋ねてきた。どうやら信じがたい話だったようだ。