販売10倍増の主要因は「INSTER(インスター)」
INSTERはすでに韓国や欧州では発売済みだが、日本仕様の技術スペックについては今回、未発表だった。日本仕様の価格については「250万〜350万円の間で、EVのニーズがあると考えている」(ヒョンデモビリティジャパン関係者)として、戦略的な価格設定を検討している模様だ。
ヒョンデモビリティジャパンが言う「5年間で10倍以上の販売規模」としては当然、実質的なエントリーモデルであるINSTERの比率が高くなることが予測できる。ただし、七五三木マネージングダイレクターは、今後の販売台数目標に対する各モデルの割合については詳しく触れなかった。
その理由について「最高の顧客満足の提供」と「お客様との信頼醸成」を最優先することを繰り返して強調した。
背景には、1度目の日本参入時での学びがある。
2022年2月に日本市場再参入を明らかにした際、ヒョンデ本社の幹部は「かつて日本から撤退した理由は、(販売店を含めた)お客様とのコミュニケーション不足」という見解を示している。合わせて「日本はユーザーがクルマ選びに厳しい目を持っており、自動車メーカーが事業を成功させることが難しい世界屈指の国」とも指摘した。
だからこそ、日本再参入から3年目となる2025年は、ヒョンデとしてのブランド価値を顧客に対して丁寧に分かりやすく訴求することが重要となるだろう。ブランド価値が認められれば、ユーザー側から新たなモデル導入に対する要望や、すでに販売しているモデルに対する改良の要望がヒュンデ側に届くはずだ。
日本市場におけるブランド認知度が育つことをじっくり待つ、という経営手法が今後、どういった結果を生むのか、とても興味深い。
なお、販売体系については今後も、カスタマーエクスペリエンスセンター以外に実店舗として販売拠点は設けず、オンライン販売専業を貫く姿勢をみせた。
桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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