北朝鮮による日本人拉致事件の解決は、依然、日本国民の大多数の悲願であるが、話題となる頻度が減ってきた。
菅直人政権下の今の日本ができることも極めて限られている。いや、自民党政権時代でも、小泉純一郎首相の北朝鮮訪問こそ5人の日本人拉致被害者の帰国をもたらしたが、それ以外の進展はないままで来た。
その意味では、米国の民間の「北朝鮮人権委員会」が、5月12日、ワシントンで新たな報告書を発表したことは、拉致問題に改めてハイライトを当て、米国の官民だけでなく国際的な関心を再燃させる貴重な機会となった。
日本の拉致被害者たちの「家族会」事務局長の増元照明氏がこの報告書発表の記者会見に加わり、熱をこめて演説をしたことも、日本の拉致問題の悲劇を再び国際舞台に登場させる上で大きな意義があった。
日本以外の拉致被害者たちの悲劇も明らかに
今回の動きの主役となった米国の「北朝鮮人権委員会」は、超党派の元政府官僚や元議員、人権擁護の活動家、学者や有識者が集まって結成した人権団体である。2001年に、民主党系の故スティーブン・ソラーズ元下院議員と、共和党系のリチャード・アレン元大統領補佐官が共同議長となって発足した。
活動の焦点は、北朝鮮の人権弾圧を調査することにある。実務を仕切っているのは、国防総省や国務省で朝鮮半島問題を担当した専門家のチャック・ダウンズ氏だ。今回の報告書の作成も同氏が中心となっただけでなく、12日の記者会見も彼が進行役を務めた。
さて、「拉致されて」と題するこの報告書は、北朝鮮人権委員会が3年をかけて取り組んだ成果だという。写真や地図、図表などを多数つけて、140ページほどから成る。その内容は以下のような骨子だった。