アップルがもたらすインド製造業の躍進

 アップルは製造分野のサプライチェーン(供給網)において、中国への過剰依存からの脱却を図るべく、電子機器受託製造サービス(EMS)大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業などと協力し、インド生産の拡大を進めている。

 ゴヤル氏によると、現在、世界のiPhoneの14%がインドで製造されており、その割合は「今後増加する見込み」(同)。アップルは製販両面でインドを重視している。同社は過去2年間でインドでの組み立て事業を拡大し、小売事業も強化した。ゴヤル氏によると、インドの顧客はより高価なiPhoneを選ぶ傾向が強まっている。

 これに先立つ24年7月、米ブルームバーグ通信英ロイター通信は、24年3月までの1年間におけるアップルのインド売上高が約80億米ドル(約1兆1500億円)となり、前年の同じ期間の60億米ドルから約33%増えたと報じた。売り上げの半分以上は高価格帯のiPhoneが占めており、インドにおける同社成長のけん引役になっている。

 アップルはインドにおいて、タブレット端末「iPad」、ワイヤレスヘッドホン「AirPods」、腕時計型端末「Apple Watch」など、他の製品の生産も開始した。ゴヤル氏は「アップルの生産量はますます増加している」と説明した。

 インド商工省によると、アップルのインド事業拡大により、同国の製造拠点で15万人の雇用が創出され、同社はインド電子機器産業における最大の雇用主となった。

 電子機器の製造はモディ政権が掲げるインド製造業振興策「メーク・イン・インディア」(インドでの製造)の重要な政策目標である。こうしたなか、アップル誘致の成功体験が、半導体製造事業立ち上げの原動力になっているようだ。

インドの企業誘致には課題も

 CNBCによれば、米グーグルや米マイクロソフト、エヌビディアといったテクノロジー大手は、インド政府の後押しを受け、AI(人工知能)の最先端技術を同国に導入している。ただ、インドの企業誘致には課題も残っている。

 アナリストらは、インドには企業の進出を妨げる複数の要因があると指摘する。インフラの整備不足や煩雑な行政手続きといった課題に取り組まなければ、一層の発展は難しいという。