エヌビディアの「市場独占」

 3社はAIブームの恩恵を最も受ける企業として注目を集めるものの、その市場優位性に疑問が投げかけられている。

 みずほ証券の分析によると、オープンAIの「GPT」のようなAIモデルに使われる半導体の市場で、エヌビディアは70~95%のシェアを持つ。同社の強力な価格決定力を裏づけるのは、78%という高い売上高総利益率(粗利益率)だと指摘されている。

 最近はエヌビディアの市場支配力について様々な意見が聞かれるようになった。NYTによると、そのうちの1つは「ロックイン」と呼ばれる。ソフトウエアによって、顧客を自社の半導体に縛りつけ、競合他社への移行を困難にするというものだ。エヌビディアが顧客への半導体供給を制限したり、不当な価格で販売したりしているといった懸念もあるという。

マイクロソフトの「実質的な買収」

 マイクロソフトについては、AIスタートアップへの出資に問題があるのではないかと指摘されている。NYTによれば、マイクロソフトはオープンAIへの出資比率を49%にとどめることで、反トラスト法調査の回避を狙っている可能性があるという。

 WSJによれば、FTCはマイクロソフトとAIスタートアップの米インフレクションAI(Inflection AI)が締結した6億5000万ドル(約1010億円)のライセンス契約を調査している。マイクロソフトは24年3月、インフレクションAIのCEO(最高経営責任者)であるムスタファ・スレイマン氏を採用し、新設するAI製品研究部門の責任者にすると発表した

 WSJによると、マイクロソフトはスレイマン氏に加え、インフレクションAIのほぼすべての主要幹部を引き抜く形で取引を成立させた。企業は1億1900万ドル(約185億円)を超える買収案件を反トラスト法当局に報告しなければならないが、インフレクションAIとの取引は買収には当たらないので、その必要はない。だが、この取引は実質的な買収だと指摘されている。マイクロソフトは、当局による買収審査を回避する仕組みを意図的に作り出したのではないかと疑われている。