「私の体を弄ぶためにカネを払った」

 さて5月10日の裁判だが、早貴被告は黒いスーツ姿で、係員に付き添われながら法廷に現れた。手には手錠、腰には腰縄が着けられていた。早貴被告が公の場に姿を現すのは3年振りのことだ。

 逮捕・起訴されてからこれまでの約3年間、接見禁止の処分が続いており、彼女と会えるのは弁護士以外にはいなかった。背中まで伸びたストレートの黒髪にマスク姿であったので、表情をうかがうことは難しかった。

 証言台前で早貴被告は氏名・住所・職業について裁判長の質問に対して答えたが、声は消え入りそうな小さなものだった。

 この日は検察官が冒頭陳述を読み上げ、早貴被告に罪状認否を確認することになっている。検察は、前述のような早貴被告の発言により、被害男性が錯誤に陥り、金を振り込んだと主張した。この冒頭陳述に対する意見を裁判官から求められた早貴被告は、傍聴席後方の席には届かないくらいの小さな声で話し始めたが、その発言はあまりにも予想外のものだった。

「お金を受け取ったことは事実で噓をつきましたが、(被害男性は)それを分かったうえで、私の体を弄ぶ(もてあそぶ)ために(お金を)払ったと思います」

 なんと詐欺罪の成立を争う作戦に出たのだ。筆者は、おそらく早貴被告は「騙すつもりはなかった」という主張をするものと予想していた。あるいは、もしかしたら詐欺についてはすっぱり認める可能性もわずかながらあるかも、と思っていた。それだけに早貴被告がこのように“パパ活”をあっけらかんと認めたのには驚いた。

 要するに早貴被告は法廷で「被害男性にウソをついたけど、向こうもウソだと分かりながら私のカラダ目当てにカネを払ったはずだから詐欺罪は成立しない」と主張したわけだ。いや、体を弄ばれた自分はむしろ被害者だと言いたかったのかもしれない。