黒い猫をたびたび見かけました。「さっき会った猫が、またここに?」と、何度か思ったのですが、よく見れば、毛並みの黒さ加減も個性も違う猫でした。

 こちらの黒猫は、おじいちゃんから「ネーロ(黒)」と呼ばれていました。ストレーザの町はそれほど広くなく、少し歩けば「郊外」といった感じの静かな雰囲気になります。

 山で酪農をしている家なのかもしれないなと思いながら通りすぎようとすると、シッポを大きくふりながら駆け寄ってきた犬が、目の前で座りました。賢そうな表情を見て、牧羊犬にちがいないと想像しました。

 指令を待つような瞳で見つめられ、何か言わなくてはと焦りました。とりあえずしゃがむと、犬は姿勢を低くしこちらへ突進。大きくシッポをふりながら頭をくっつけてきたので、両手でよしよししてやりました。