信長が死んだとなれば、天下の行方いかんにかかわらず、織田帝国の空中分解は避けられない。だとしたら秀吉としては、まずは自力での生き残りを図らねばならない。ここは宇喜多を捨て石にしてでも、ただちに退却して全軍を姫路に集結させる、というのが正しい判断だ。光秀やら天下やらに、どう対応するかなどというのは、その先にある問題でしかない。
何か想定外の突発事態が起きたら、まずは情報収集と事実確認につとめ、冷静に間違いのない判断を・・・などというのは、平和な人間の発想である。そんな悠長なことをいっていたら生き残れないのが、非常時であり、戦国乱世なのだ。
情報不足で(ないしは情報が錯綜して)事実が確認できないからこそ、すばやく決断を下し、少しでも生き残る確率が高い方へ、ためらうことなく全力で動く。それが、乱世を生きる戦国武将たちの危機管理術だったのだ。