(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年1月16日付)
中国国家主席の習近平は歴史が自分の思う方向に動いていると考えている。昨年3月にモスクワを訪問した際、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンに向かって次のように語った。
「今現在、我々は100年間見られなかった変化を目の当たりにしており、我々が一緒にこの変化を牽引している」
このやり取りは世界中に伝わった。
習の言葉は、ロシアのウクライナ侵攻に対する明確なお墨付きとして、そして中国も近く「この変化を牽引」する役割を果たす意思表示として受け止められた。
台湾侵攻をちらつかせる中国の長年の脅しを考えると、台湾にとっては恐ろしい意味合いがあった。
先週末の台湾総統選挙の後、こうした侵攻の脅しは必然的に、世界的な課題として戻ってきた。
13日の投票に先駆け、中国共産党は台湾の有権者に対し、平和と戦争の間で「正しい選択」を下すよう警告していた。
だが、中国政府の見るところ、台湾は「間違った」選択を下し、中国が危険な分離独立主義者と見なしている民主進歩党(民進党)の頼清徳を次期総統に選んだ。
今の台湾と22年以前のウクライナの相似
台湾の危うい立場と2022年以前のウクライナのそれの間には明確な類似点がいくつかある。
1つ目は、プーチンと習がそれぞれウクライナと台湾のことを本来自国に属する領土と見なしていることだ。
独立国ウクライナを承認したプーチンの言葉は不誠実だった。また、台湾を本土と「再統一」する取り組みは、往年の中国の政策だ。
2つ目のつながりは、プーチンと習はともに、ウクライナと台湾は真の自治権を欠き、覇権的で攻撃的な米国の道具として使われていると主張していることだ。
このため母国のためにウクライナ・台湾を取り戻すことは2つの目的をかなえる。
まず、ロシアと中国の歴史的な運命を全うすることになる。
そして侵略が成功すれば、欧州とアジアという2つの大舞台で米国の世界的覇権に甚大な打撃を与えることができる。
それゆえ「100年間見られたことのない」変化が生じるわけだ。