「水ケーション」プロジェクトをすすめる萩原智子さん。

 多くの産業、業界で変化が起きている。顕著なのは、他業種、他業界との掛け合わせである。

 多くの日本人が世界で活躍するようになったスポーツにおいてもその成果は顕著である。

 元メジャーリーガー・上原浩治や競泳の萩原智子らのマネジメント、トレーナーのマネジメントや派遣、スポーツファシリティのコンサルティングなどを行うスポーツバックスの澤井芳信氏は、スポーツ業界でこの掛け合わせに可能性を感じている(文中敬称略)。

元五輪選手「水の大量消費」に思い至る

 10年、スポーツマネジメント業界を中心に経営をしてきて、ブレなかったことが「スポーツをデザインする」という理念だ。

 スポーツビジネスは大きな広がりにみえるが、実は小さな分野の集合体だ。

 スポーツという大きな枠には「企業」、「エンターテインメント(エンタメ)」、「教育」、「健康」などが密接につながっている。そして、「アスリート」が介在することで、スポーツ×○○○というかけ算が生まれる。

 例えば、弊社クライアントで元五輪代表のスイマーである萩原智子。彼女は競泳選手として当たり前のように水の中を泳いでいた。

 しかし、あるとき、水は森を源泉としたかけがえのないものであることを知った。水の大切さを深く考えることなく、プールで大量の水を消費して過ごした現役時代の反省から、子どもたちの水泳教室では楽しく泳ぐということと合わせて、水の大切さを理解してもらうことを考えた。

 萩原さんは現在、「水(みず)」と「コミュニケーション(交流)」、「教育(エデュケーション)」を掛け合わせた「水ケーション」という教育プログラムで全国を巡っている。

 このプログラムに参加した人からこんな声をもらった。

「水泳の授業でもきれいなフォームで泳ごうと意識するようになりました。また、身近にある自然について、新たな目線で接するようになり、樹種などにも興味を持つようになりました」

 水泳という「スポーツ」に「教育」を懸けた結果、スポーツに大きな価値が加わった。これが「スポーツをデザインする」の一例だ。