反転攻勢本番では欧米供与の戦車が大活躍する(写真は米国のM1A2戦車、2月16日NATO演習で、米陸軍のサイトより)

 ウクライナ軍は、6月10日頃から反転攻勢に転じている。

 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は現在の反転攻勢について、「我々が望んでいたよりも遅い」という印象を述べた。

 また、多くの犠牲も出ている。

 軍事シミュレーションの結果よりも遅いのか、それとも、これまでの戦闘との比較でハルキウやへルソン正面の戦闘に比べるとかなり遅いというのだろうか。

 しかし、まだ「大規模反攻」とは言えないようだ。

 ウクライナ軍の反転攻勢では、ロシア軍は攻撃されることを予想していて、周到な防御の準備をしていた。

 したがって、ロシア軍が逃げずに普通に戦う前提で、両軍の相対戦闘力を加えた戦闘推移分析をすれば、ウクライナ軍の攻撃速度が遅くなり、犠牲が出るのは当然のことである。

 ハルキウなどの戦闘では、ロシア軍は周到な防御準備を行わず、ウクライナ軍の奇襲を受けて陣地を死守することなく、混乱して撤退した。

 だから、ウクライナ軍はハルキウを短期間に奪回できた。上手くいきすぎたのだ。

 現在の反転攻勢の戦闘では、ロシア軍は昨年秋から防御準備をして、逃亡せずに戦っている。

 ウクライナ軍は厳しい戦いを強要されていると評価したくなるのだが、私は現段階では、当然の結果だと受け止めている。

 なせなら、ウクライナ国防当局者は「これまでの進捗状況は主要作戦の準備段階に過ぎない」と述べているからだ。

 オレクシー・レズニコフ国防相も「本格的な攻撃はまだこれからだ」と述べている。

 現実に戦いが発生している場面、特にウクライナ軍の戦闘の範囲、投入部隊の数、戦車や歩兵戦闘車の数からみてもそうだ。

 現実に、各地域の一つひとつの戦闘に焦点を当てて見ると、両軍はどのような戦いを実施しているのか。

 具体的には、ロシア軍の防御戦闘の要領(KILLZONE戦法と機動防御)、これに対するウクライナ軍の攻撃戦闘の要領について考察する。

 そして、今後の両軍戦闘の結果(勝敗)の予想、つまり「反攻は2~3か月が決定的な山場」というのが現実的な見方なのかについて述べる。