- 香港で、民主化運動を支えた非公式な「香港国歌」とされる楽曲「香港に栄光あれ」が全面禁止になるかもしれない。
- 中国はこれまでも、あの手この手でこの歌を取り締まってきたが、根絶できず強硬手段に打って出ようとしている。
- 世界では国際的なスポーツイベントの表彰式で、本物の国歌として「うっかり間違い」して放送する事案が多発。心の国家を守る運動は広がっている。
6月9〜16日にかけては、香港に関わりのある人たちにとって心穏やかならぬ1週間だ。2019年のこの時期、「反送中」というプラカードを持った市民が大規模デモを繰り広げた。香港で拘束された容疑者を中国に引き渡すことをできるようにする逃亡犯条例の改正案を発端とした民主化運動だ。
香港人たちは、改正案の完全撤回や香港行政長官の直接選挙などを求める五大要求を掲げた。1年後の2020年6月末の香港国家安全法(香港国安法)が制定されるまで、多くの香港人が命がけで抵抗した。最終的には中国政府とその傀儡(かいらい)の香港政府によって徹底的に弾圧された。この民主化運動の始まりと終わりが6月なのだ。
6月は北京天安門事件の悲劇を振り返る月でもある。今年は天安門事件34周年。中国共産党に民主と自由、人権が踏みにじられた痛みを多くの人が思い出す。
そんな悲しみの季節に、香港人を苦しめる問題が再び起きている。反送中運動の際にデモ参加者たちが歌い、非公式な「香港国歌」として香港人たちから愛されている「香港に栄光あれ」(願栄光帰香港)が歌えなくなるかもしれないというのだ。
香港律政司(司法省に相当)は6月5日、高等法院(高等裁判所)に対し、「香港に栄光あれ」の香港における全面禁止を求める請求を行った。法院は12日に、この請求に対する審理を7月21日まで延期すると発表した。もしこの請求を法院が認めたら、香港人はこの歌を聞くことも歌うことも、人に伝えることもできなくなる。