日銀は17日に開催した政策委員会の通常会合で、国際統一基準行に対する劣後特約付き貸し付け(劣後ローン)供与の具体的な検討を開始することを決定した。16日の日経新聞が報じていた内容に沿った動きである。年度内のみならず、主要企業決算が発表される5月以降も視野に入れつつ、金融機関の仲介機能低下や金融システム不安定化が起きるリスクに対して日銀が危機感を強めていることが反映された動きであろう。
日銀発表文は、「今後、国内外の金融資本市場の緊張がさらに強まり、個々の金融機関が、先行きの株価の下落等に対する懸念から自己資本制約を強く意識する場合には、円滑な金融仲介機能の維持に支障が生じる可能性がある。また、国内景気悪化の影響とも相俟って、金融機関の経営体力が低下し、金融システムの安定性に影響が及ぶ可能性もある」という状況認識を、今回決定の理由とした。
併せて日銀が公表した「劣後特約付貸付案(骨子)」には、対象金融機関は「本件貸付を希望する自己資本比率規制上の国際統一基準行(銀行)で、日本銀行が適当と定めた先」、貸付総額は「1兆円」、利率は「市場実勢を勘案し日本銀行が定める利率」、貸付期間等は「今後検討」と書かれている。
今回の日銀の決定は、個別行ごとのTier2増強で自己資本比率を引き上げ得る余地の大きさ、日銀が定める利率などの具体的条件次第で利用される頻度は変わってくるものの、少なくとも、国際統一基準行が自己資本を増強しようと考える場合の選択肢が1つ増えることは意味している。
(1)金融機関自身による市場調達、(2)金融機能強化法に基づく自己資本調達(普通株への転換権付き優先株によるTier1増強)、(3)日銀による劣後ローン供与(Tier2増強)という3つの選択肢が存在する状態になるわけで、白川方明総裁は記者会見で、「こうした手段を揃えたことに大きな意味がある」と述べた。
銀行保有株式買い取りのようにあまり利用されないのではないか、という質問に対して、白川総裁は、「最後の貸し手機能を使わない状態は、それだけ金融システム的には健全な状態を維持しているということだ。安全弁の性格上、金額の多寡だけでは判断できない」と返答した。