ユーラシア経済連合(EAEU)首脳会議に出席したロシアのプーチン大統領(2022年12月9日、写真:AP/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 ロシアのウクライナ侵略をめぐっては、ロシア軍の苦戦やロシア国内の国民の動揺が伝えられるとともに、「プーチン大統領が停戦の交渉に応じる」「プーチン政権が崩れる」などといった観測が米欧や日本でも語られるようになった。

 だが米国の著名なロシア研究の専門家がその種の観測を否定し、「プーチン氏は、ウクライナをロシアの勢力圏に置くための軍事行動を止める気配はない」という分析を公表した。ロシアのウクライナ支配の願望は歴史的に根強く、その目的を追求するプーチン氏の失脚も考えられない、という。

 この分析を公表したのは、米国ワシントンの大手研究機関「カーネギー国際平和財団」の上級研究員でロシア・ユーラシア研究部長のユージン・ルマー氏である。同氏の見解は12月9日に、「プーチンの長い戦争」と題する同財団の論文として発表された。

 ルマー氏は2010年から2014年までオバマ政権の国家情報会議のロシア担当官を務めた。ロシアの内政と外交を専門分野として国防大学、戦略国際問題研究所(CSIS)、ランド研究所などにも勤務し著作も多い。とくにプーチン研究では全米でも有数の権威として知られる。

プーチンは苦戦も覚悟のうえで軍事行動を継続

 ルマー氏は論文「プーチンの長い戦争」で、まず、最近米国や欧州の一部で「プーチン政権は崩壊が間近い」とか「プーチン大統領は側近勢力などによりまもなくウクライナとの停戦交渉の開始を余儀なくされる」という観測が広まっていることを指摘した。それらの観測は、ウクライナ領内における戦闘でのロシア軍の後退や損害の広がりなどに起因している。