クロアチアの導入が決まったユーロ(写真:新華社/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 2023年1月1日より、クロアチアが独自通貨クーナを放棄し、ユーロを導入する。これで欧州連合(EU)に加盟している27カ国のうち、20カ国がユーロを導入することになる。同時に、クロアチアは2023年初よりシェンゲン協定(欧州の国家間で検査なしで国境を越えることを認める協定)にも参加する。

 クロアチアは人口約400万人の小国だ。1991年に旧ユーゴスラビア連邦から独立し、現在のセルビア(当時はモンテネグロとともに新ユーゴ連邦)やボスニア・ヘルツェゴビナとの間で戦争を経験した。

 1995年に戦争が終結した後、政治・経済の構造改革に努め、2005年からEU加盟交渉を開始し、2013年7月にEUに加盟した。

 それから10年が経ち、クロアチアはユーロを導入する。

 クロアチアがEUに加盟した2013年、EUはギリシャの累積債務問題に端を発したユーロ危機の真っ只中にあった。ギリシャのユーロ離脱が検討されたり、各国の財政が未統合で通貨の価値の裏付けが不十分だという構造的欠陥が指摘されたりするなど、ユーロの在り方が問われていた。

 クロアチアよりも先にEUに加盟したチェコ、ハンガリー、ポーランドでは、このユーロ危機を受けてユーロ導入に向けた機運が完全に萎んでしまった。

 しかしながら、クロアチアは2008年にEUに加盟したブルガリアとともに、ユーロ導入に向け厳しい構造改革に努めてきた。10年近い歳月を経て、それがようやく結実するわけだ。

 ともに構造改革に努めてきたブルガリアもまた、順調にいけば2024年1月にユーロを導入する公算が大きい。そのため、ユーロ導入国は現状の19カ国から今後2年間で2カ国増え21カ国となる。

 この間、ユーロの構造的な欠陥である財政の未統合といった問題は全く改善されていないが、なぜユーロは拡大し続けるのだろうか。