オスプレイが初参加して東富士演習場で行われた陸上自衛隊と米海兵隊の合同軍事訓練(資料写真、2022年3月15日、写真:AP/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 トランプ政権や安倍政権が中国の海洋侵出戦略に(遅ればせながらも)本腰を入れて対決する姿勢を示し始めた数年前より、筆者の知人(米海兵隊や米海軍関係者)たちの中から、「中国の台湾や南西諸島への軍事侵攻に対して日米同盟軍が効果的に対処するには、常設のアメリカ軍と自衛隊による統合共同司令部(以下「常設日米合同司令部」)が不可欠である」との意見が唱えられていた。

 トランプ政権は中国やロシアを威圧するための米軍再建に莫大な予算投入を開始したが、バイデン政権が誕生すると、その代わりに、主敵(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)に敵対する勢力(例えば台湾やウクライナ)やそれらに利害関係のある同盟友好諸国(例えば日本やオーストラリアやNATO)の危機感を煽ったり、機会があれば軍事衝突を引き起こさせたりすることによって、アメリカが直接矢面に立つことなく外交的軍事的優位を手にし、同時に兵器弾薬軍需物資を支援することにより経済的利益も確保しよう、という政戦略を用い始めた。

 対中強硬派の米軍関係者たちはバイデン政権を好ましくなく考えていたのであるが、皮肉なことに、バイデン政権の政戦略に基づいた対中軍事戦略のためには、日米共同での軍事的対応がトランプ政権時代の比でないほどに不可欠となってきた。

 なぜならば、東アジアにおける中国の海洋戦力はアメリカの戦力を脅かすに至っており、宇宙サイバー戦力でもアメリカは中国の風下に置かれつつある。その状況下では、米軍単独で中国軍と対決することは無謀になってしまったからである。

 そのため、上記のような常設日米合同司令部の必要性は現実のものとして唱えられ始めており、日本側にもこれまでのように非公式の場だけではなく公式の場においても表明され始めている模様である。