(北村 淳:軍事社会学者)
8月下旬から9月上旬にかけて、陸上自衛隊とアメリカ陸軍による合同実動訓練「オリエント・シールド2022」が奄美大島を含む九州各地を中心に実施された。
日米両軍から2100名の将兵が参加して実施された合同訓練では、現代戦において重要性がますます高まっているサイバー・宇宙空間を含む多領域を統合しての相互運用性能力を向上させることを主目的としている。
米陸軍・多領域機動部隊(MDTF)が合同訓練に初参加
毎年日本で開催されているオリエント・シールドに、今回初めて米陸軍第1多領域機動部隊(MDTF-I)が姿を見せた。
これは、アメリカ側にとって、第1列島線上の戦略要地に位置する奄美大島などから地対艦ミサイルで中国艦艇を攻撃する「接近阻止作戦」の確認が最も重要な訓練項目となっていることを示している。
多領域機動部隊(Multi-Domain Task Force、以下「MDTF」)というのは、トランプ政権下でアメリカの国防戦略が抜本的に修正されて、主たる仮想敵が中国とロシアに変更されたのに伴って米陸軍が打ち出した新戦略を遂行するための先鋒戦力となる戦闘組織である。
MDTFは、米陸軍(そして米軍全体の)先鋒部隊として中国やロシアとの紛争最前線に展開し、中国軍やロシア軍の接近阻止戦力(米軍の中国やロシアへの侵攻を阻止する部隊)に攻撃を加えて、中国やロシア側に対する米軍の接近阻止戦略を実施する緊急展開部隊として構想されている。