(北村 淳:軍事社会学者)
8月28日、2隻のアメリカ軍艦が台湾海峡を通航した。ペロシ米下院議長が台湾を訪問して以降、初めての米軍艦による台湾海峡通航となった。
今回台湾海峡を通航したのは、ミサイル巡洋艦チャンセラービル、同じくアンティータムである。それらの米海軍第7艦隊巡洋艦は共に横須賀基地を母港にしている。トランプ政権が台湾への軍事的支援を強化する政策へ転換して以来、その一環としてたびたびアメリカ軍艦が台湾海峡を通航するようになった。また最近はイギリス海軍やカナダ海軍の軍艦も台湾海峡を通航している。
今回のチャンセラービルとアンティータムを含む米軍艦やNATO諸国の軍艦が通航しているのは、アメリカ当局の表現によると「国際水域(international waters)」とされている台湾海峡の中央部に近い海域である。
それに対して中国は、アメリカによる「国際水域」という表現を受け入れていない。なぜならば、中国や日本、それにNATO諸国(アメリカを除く)をはじめ世界の大半の国々が参加している「国連海洋法条約」では、「国際水域」などという概念は定義されておらず、「あたかも、いかなる国のいかなる艦艇船舶でも自由自在に使用できる海域」というイメージをアピールするためにアメリカが勝手に主張している概念だから、というわけだ。