源氏山公園の源頼朝像

(歴史家:乃至政彦)

「いい国つくろう」で知られる1192年、源頼朝は武家政権「鎌倉幕府」を創設した——と、多くの人は日本史の授業で学んだことだろう。

 じつはその成立時期は研究者の間で長年揺らいできた。鎌倉幕府に限らず、歴史研究が進むたび、歴史の年表や、「幕府」といった言葉の定義も、いつの間にかガラッと変わり、授業で学んできた歴史の常識が、今は通用しない場合もある。

 歴史家・乃至政彦氏が、「一次史料からわかる本当は楽しい日本史の解釈」をベースに毎月配信する人気歴史コンテンツシリーズ「歴史ノ部屋」で、歴史研究家で歴史作家の河合敦氏と対談。

 専門家だけが知る、歴史の定説の裏側とは? その一部をご紹介する。(文・林貴代子)

ヒーローだった偉人が、わき役に?

乃至:河合敦先生と、お笑いコンビ「ブロードキャスト!!」の坊野史典さんの話題の共著『面白すぎる! 日本史の授業(あさ出版 / 2022年2月発行)』を拝読しました。

 飛鳥時代から幕末までの広範囲をかなりディープな所まで紹介されていて、もう授業というレベルを越えた面白さでした。

 その著書の表紙に描かれている聖徳太子。小学校では「聖徳太子」と習いますけど、中学校の教科書だと「厩戸皇子(うまやどのおうじ)」と紹介されていますよね。かつての通説的な話と、最新の歴史学を反映させた歴史と、今は段階的に学んでいく時代なんでしょうか?

河合:小学校の教科書では、聖徳太子は摂政(せっしょう)で、『冠位十二階憲法』をつくったと書いてありますれど、高校の教科書でのこの時代の主役は推古天皇で、厩戸皇子と蘇我馬子(そがのうまこ)が協力して天皇を補佐した、とあるんです。小学校でヒーローだった人が、高校ではわき役になる。混乱しますよね。イメージが違うぞ、と。

 これは、小学校で学ぶべき偉人42人の中に聖徳太子が入っているので、文部科学省の規定に従って教えなければならないんですよね。