2月18日、厚生労働省と文部科学省の検討会で「新医師臨床研修制度」見直しの最終報告がまとめられました。
その席で舛添要一厚労相は、「最大の問題は、国家の統制がどこまで許されるかということ。憲法のことを言えば、職業や住居選択の自由もある。(中略)統制はできるだけ避けたいが、どこまで国民が納得できるか」と述べました。
新人医師の研修と、「国家の統制」「職業や住居選択の自由」などという言葉がどうして結びつくのか、にわかには分からないと思います。
今回の制度見直しの一番の特徴は、医師の地域偏在を解消するために「研修医の定員について、都道府県ごとの上限新設に加え、すべての研修先病院の募集枠を制限する」ことが定められたことです。
どういうことなのかと言うと、要するに、人気病院の研修医の定員を削って、不人気な病院へ強制的に割り振るという決定なのです。
人手不足の病院で頑張っている医師たちを責めるつもりは毛頭ありません。しかし、不本意な病院で研修することになった新人医師はモチベーションを保っていけるのでしょうか。また、実際にそこで充実した教育が行えるのでしょうか。
今回は、「新医師臨床研修制度」見直しがもたらす問題について考えてみたいと思います。
新医師臨床研修制度は医療崩壊の本質的な原因ではない
現行の新医師臨床研修制度は2004年4月から導入されました。NHKなどのように、新医師臨床研修制度が現在の医療崩壊を引き起こした元凶であるかのように解説しているメディアもあります。
確かにこの制度だと、卒業してすぐに各科の医局に入局するわけではないので、研修が終わるまでの2年間は医局の医師が足りなくなります。そのため、地域の病院から大学へ医師を引き揚げざるを得ないという事情がありました。
でも、それが本当の医師不足の原因ならば、制度が導入されてから2年経過した時点で問題は解消されているはずです。しかし、5年経過した現在でも医師不足は解消されていません。そして、この研修制度導入の際に全新人医師に必修化された小児科や産婦人科の医師不足は、深刻さを増すばかりです。